今日も今日とてその顔が見たくて思わず赴く足に我ながら呆れてみる。
………まあ呆れたからって止めるかっていわれたら、ふざけんなってところだけどよ。
だってあいつ、別に嫌がってねぇもん。
本気でいやだって思われてんのに気づかないわけねぇじゃん、この俺が!
ことあいつに関してなら、誰よりも簡単に看破してやるよ。その自信が、俺にはっきり示してんのは「会いに行ってOK!」だし、これはいかない方が馬鹿だろ?
だから足取りも軽く俺はそこに向かう。
………相変わらず変わらない目をした、誰よりも強くて優しい馬鹿のところに。
………………………………………………………。
なんでこれがここにいやがる?
見た瞬間に思い浮かんだのはその一言。……当然だ。
誰の許しを得てこの鳥は人のもんと一緒に寝てんのかねぇ〜?
それはもう陽気な春風に誘われて家族総出で散歩にでたら眠気に誘われた母親を中心にみんな昼寝中!!ってな図で。
…………………まだ虎はいいとしてやろう。はっきりいってこれは論外。ヌイグルミというよりすでに枕だ。
ガキは除外。シンちゃんの倫理観念からいってはっきりと立場が違うし?
俺も大人だからそれっくらいは大目に見てやってもまだ、いい。
が、しかしだ。
この鳥は別だろ?
俺と同じ目でガキの頃からシンちゃん追い掛けてるっつーのに、許せっていう方がおかしい。
さ〜て、どうしてやるかな…………
ここはやはり焼き鳥にでもして起きたシンちゃんにでも食べさせてやるかねぇ……………
クツクツと喉の奥で笑いながら早速調理☆と思ったら………パチッとばかりに目があきやがった。
ちっ、勘がいいな………。
起きた瞬間にまっ先に写ると思っていた寝顔に対して向けるはずだったらしいとろけるみてーな笑みが引き攣ることも忘れて凍った。
けっ、この程度でここまで自我忘失しててよく戦場で生き残れたもんだ。どうせ後ろの方でビクビクして固まっていただけなんだろうけどよ。
まあ邪魔だし、これは捨てておくかね。
あっさり見切りをつけて俺は持っていた鳥の羽根をそのままポイッと気軽に捨ててみる。ゴミ箱に捨てろって?
………この俺がなんでわざわざそんなもん探してこなきゃいけねぇんだよ。
改めて俺がシンちゃんの寝顔に目をむけたと同時くらいに鳥がどっかの地面に落ちたらしい音が響く。……いかんな、これっくらいかわせねぇで英雄気取ってんのか。
軽い笑いを噛み殺し、俺は芝生に絡む長い黒髪に腕を伸ばす。これ思いっきり引っ張ったらシンちゃん飛び起きるかね?
喉の奥でまた笑い、指先に絡んだ髪を軽く自分に引き寄せるように引く。が、抵抗もなくそれは静かに俺の方に頬をむけて無防備に笑いかけてきやがる。
……………………ちくしょう……。なんでこいつはこうホヤホヤ笑うんだ?
俺の気配が判らないわけじゃねぇくせに、近付いたって寝ていられるくらい安心しやがるし。それが馬鹿にしているとか、軽んじているとかじゃねぇのが判るから……むかつく。
寄せた指先に絡む髪に唇で触れる。さすがにこんな真似、こいつが起きてる時は出来ねぇよな。そういう目で見てるなんて思っちゃいないだろうし………。つうか本気にとってねぇだろうからな。
いい加減気付けってのによ。鈍感生真面目なんて救いようねぇぜ?
なんとなく仏頂面になってきた自分に自覚はあるが……まあいつものこと。気にする必要はないだろう。
さて……早速本題入りますかね。
…………俺は情け容赦なく思いっきり勢いよくシンちゃんの髪を引っ張てみた。
あ、髪何本か抜けたな。まあいいか、シンちゃん髪の量多いし。
「〜〜〜〜〜〜〜っってぇ!?」
びっくりしたって顔で目に涙ためながらようやくシンタローが起きた。おー、見事な腹筋だな。寝起きだってのになかなか俊敏だ。
目の前にやってきた上体を眺めながらそんなことを考えてみる。
そして顔にかかる影で俺の存在にやっと目をむけたシンちゃんの顔が俺に向けられる。
…………瞬間、キス。
やっぱ起きた時にはこれでお目覚めvが基本だろう。
いっそこのまま陥落してやろうかとも思うが……まあいいや。本気で殴ってこないし。これで我慢出来ちゃうんだから俺って結構健気だろ?
もっともそいつをシンちゃんが認めるかっていったら、まー……認めねぇだろうけど?
軽い笑いを噛み殺して俺は塞いだ唇をどうしようかなーとか考えていたら……やな気配が背後に掠める。
………ちっ! もう復活してきやがったか、鳥ぃ!!!
背中の急所目掛けて思いっきり飛ばされた数本の羽根を鷲掴んで俺は余裕綽々っつー面のまんま振り返ってやる。
オーオー、勇ましいねぇ。完璧俺より弱いくせに、必死ですっつー面構え。女に見せてやりゃあ惚れられんじゃねぇの?
まあ俺のシンちゃん相手じゃこれは庇護欲の方をそそられるんだろうけど? 無駄だからいい加減やめとけってのにな。
ま、それでも欲しくて仕方なくなるのは当たり前だけど。じゃなきゃ俺だってとっくに壊して捨てる。自分のものだけにならないものなんてさ。
そんな風に互いを牽制しつつな俺たちの間に間の抜けた声が加わる。………この男、なんで緊迫感に気づかないんだ?
戦場以外じゃただの天然か!?
「悪い、バード。………アラシ、こういう嫌がらせはやめろっていってるだろ?」
寝起きとは思えないはっきりした思考回路だな。………いつも通りのボケだし。
鳥の怒りの意味も、俺の行為の本心もまったく考えてねぇ…………………
呆れが入った俺とは違い、鳥は改めてまた訴えている。
…………効果があるかどうか、わかってんのかね? この天然相手に俺の行動の意味わかれっていうのは無理だろ。
死ぬ瞬間に悟ってくれたらまだいいかも、くらいのニブちんだぞ?
「シンタロー!! この馬鹿にそんな甘いこといってんじゃねぇよ!」
俺は危うく底なし沼いきだったと豪語しても格好わるいだけだぞ、お前………。
別に俺がそんなこと教えてやる必要はないけどよ。やっぱ馬鹿だな、つうかガキ? 自分の方の心配しろっていう心理がよく伺えますなー。無駄だけど。
相変わらず丈夫だなーとかあっさり笑顔でいわれて、はい終了〜。
まあそれでもこの鳥はそれを口実に甘えられんだからまだいいんだろうけどよ。
汚れた羽根なんかの毛づくろいを軽くしてもらいながら勝ち誇った顔むけてくるし。………こいつ、今度本気で底なし沼に埋めてくるか?
重りはなにがいいかな……。ナギじゃ軽いし…イナサあたりくっつけておけば丁度いいかね? 精神的にもきついだろうし……………
物騒極まりないことを軽〜い思考で考えながら俺は鳥暗殺計画なんってもんを練ってみる。
あ………シンちゃんもしかして気づいた?
睨んできてるよ。……相変わらずこういうのは鋭いねぇ。自分のには鈍感なくせに。
「シンちゃん、とりあえずその鳥捨ててこっち来いよ」
「なんで?」
軽い俺の声に固い声が返る。あ、怒ってる?
真面目そうな顔している時は……結構怒ってるのを押さえているから無表情になっていくんだよな、こいつの場合…………
でもそれ考慮に入れてやる気なし。だってこいつ、そういうの考えたやってたらどんどん困って口に出さなくなるんだぜ?
困ったように笑って流されるくらいなら、はっきりした感情向けろよ。怒りでも憎悪でもいいからさ。その方がいっそスッキリするし。
「朝からディープにしなかった御褒美?」
自分の口元に触れてペロッと舌で嘗めとってみる。……こういうこと、この男は嫌いだからねぇ。さてさて、反応はいかに?
おおー!! 茹でタコ!
うまそうにそまったなー。思わず拍手したくなるほどの瞬間沸騰ぶり。
これ…宴会芸にできるぜ、きっと。
感心している俺に飛んでくるものが二つ。
「そういうことを言うなといっとるだろうがーーーー!!!!!」
つうシンちゃんの叫び声。…………と、鳥のカッターウイング(だっけか?)が俺のいた場所に何本も突き刺さった。
………馬鹿だねー。俺がそんな蚊の止まりそうなスピードの攻撃避けれねぇわけねぇだろ?
ニヤニヤ笑いながらそう目だけで言ってやると、こちらもまた真っ赤になっていく。いやー、笑えるね。こいつもやっぱ、シンちゃん追い掛けてきただけあるは。
こういう反応をきっと見続けた年数が勝手に刻み込んだんだろうよ。哀れなこって。
「テメー!! 一回白黒つけねぇとなっっっ!」
「ん? なんだ鳥。やっと遺言状書けたのか?」
叫ぶ鳥に俺は笑う。だって俺はこいつより強いし。俺がかなわないのなんて、この世にほんの少し。心まで負かせられる奴なんて……たったひとり。
お前と俺じゃあね、格が違うの。甘やかされて育った坊ちゃんが俺の相手なんて笑われるだけだぜ?
暗い笑いを一瞬浮かべていう俺の言葉に鳥が返すより早く……また誰かの声が響く。……ん? 今度はシンちゃんじゃねぇな………
「じゃあちょうどいいからそれ終ったらうちまで来いや。あ、アラシもな。クラーケンが呼んでるぜ?」
………この片目男は……確か龍人のリュウ!
呆気にとられた俺の目の前でリュウはあっさりとシンちゃんの腕を引いて立ちあがらせると一言二言交わしてる。……聞こえねぇな、なに話てんだ?
とりあえずシンちゃんの顔を読む限り…どうせまたなにか人助け。使命感に燃えてるよ、顔が………
軽く息を吐いて適当にこの鳥あしらっていくかと考えると……おいおい、この鳥なに考えてんだ?
まーた攻撃しかけてくるし。面倒だなー、マジで殺すか?
でもそれするとシンちゃんうるさいしな………。半殺しにして持って帰るか………。
クラーケン様のことも気になるし、ちっ、仕方ねぇ。これをどうにかしてから追い掛けますかね。
俺たちのことなんかお構いなしにまだ寝てるガキと虎も抱え、シンちゃんとリュウが背中を向ける。
………………少しはこの俺とやり合う羽目になった鳥を気にしろよ。俺が絶対に殺さねぇえってわかってやがるな………………
ちらりとその後ろ姿をみた瞬間………目があった。
シンちゃんとじゃなく、リュウと。
…………っていまのは……………………
「こんの鳥………さっさと潰すッッッッッ!」
突然の俺の雄叫びにさすがの鳥もビビったのか目を丸くする。
だがそんなこと構っていられるかっっ!
あんの龍人、思いっきり笑ってきやがった!
鳶に油揚、漁夫の利!?
……………この俺相手にいい度胸じゃねぇかよっっっ!
きっちりこのお返しはいてやるぜ、龍人ッッッッ!!!
とりあえず、俺は邪魔をした上に知らず知らずにライバルの肩もったこの阿呆鳥を縄で括って竜王の城に向かった…………………
キリリク26300HIT、パーパ争奪戦でアラシVSバードVSリュウでした。
なんか……争奪戦という響き懐かしくないですか?(笑)
アラシとバードといわれた瞬間……二人は喧嘩していてもらうことは決定しました。
が、しかしっっ!
忘れてたリュウ!! 正確にはね……二人が喧嘩に夢中になっている間にこっそり来てこっそり連れていっちゃう、にしようと思っていたんですが。
アラシ視点じゃ不可能☆(爽笑)
………泣きそうになりました、マジで……
この小説はキリリクをくださったゆきさんに捧げます☆
ギャグになり切ってなくて申し訳ないですが……お受け取りください………