「……………どうしよう」
 「どうするって……捨てるのが一番だろ?」
 「美少年じゃったらわしが治してやるんじゃがのう」
 「………ガマ仙人、あんたここいないで天界戻れ」
 「飯食われちまってんだよな。なんか捕ってくるかぁ?」
 「でもリュウさん……もう夕方だし、危ないっスよ」
 「行くのは貴様だから大丈夫だろう」

 それぞれがそれぞれで喚いている中、やっと起きたらしいベッドの上の身体が起き上がりまちた。
 …………大きいわけじゃないくちぇに、並みいる男たちを一瞥して怯えもしないで大きなあくびをちてまちゅね………………
 なんだか圧倒されているらちいみんながはっきりいって格好わるいでちゅv
 「…………ちょっと、このベッド小さすぎるわよ」
 ……………………………………起きてまっ先に文句いうんかこのアマ。
 ふー、もちタツがこの場にいたらナーガ召還しちゃいまちゅね。
 あ…似たようなこと考えたらしい奴が2名ほど。イカと鳥が奮闘しようとちまちゅが、パーパたんが止めに入っちゃいました。リュウにーたん、笑ってるだけで手出ししなかったでちゅ。
 「落ち着けお前ら! とりあえず話し聞け話し!」
  ろくな話なわけないでちゅのに、馬鹿でちゅねー。というか、このメンツでまともに話し進む方がおかしいでちゅ。
 思いっきり尊大な態度のまま女が黒い髪を靡かせつつ語り始めまちた。なになに? ………………継母に美しさ妬まれて追い出された可哀想な姫君でちゅかー……………………
 なに大嘘ついとんじゃわれッ!
 姫っちゅう年齢か!? 婚期完璧逃しとるわっ


 ――――――――ザクッッッッッ!
 パタリ。


  「ちょっと待てアマゾネスー?! いまなに投げたッッ! タッちゃんが血吹いて倒れているぞ!?」
 「誰がアマゾネスよ! いまは白雪姫と呼びなさい小人その1っ!」
 「で、でも白雪姫……これじゃあナレーターが…………」
 「いなくても困んないからあんたがいってらっしゃい」
 …………俺っスか………………。いや、大体予想出来ていたんすけど。
 というわけで急遽ナレーターになったキリーっス。………とりあえず台本通りお願いします。
 席について溜め息落としつつそういうと………………
 「じゃあ早速城攻めに行くか!」
 なんでそうなるんスかリュウさんッッッッ!!!
 「なにをいってるキリー! 白雪姫といえば継母に殺されて復讐に行く話だろ!」
 まったく違います、リュウさん!!
 「下らん勝手に行け」
 「そう冷たいことをいうもんじゃないぞ、美形のにいちゃんv」
 「異常接近したら殺すッ!」
 「ガマ仙人恥晒す前に天界いって乱世兄貴とでも手合わせしてこいッッッ」
 …………リキッドさん、常識的な言葉っスけど、もう充分恥さらしいるっす。あー……クラーケンのアイスボンバーが小人の家壊しちゃったし………………
 「ちょっと小人その1。どうにかしなさい」
 さすがに収集つかないことを悟ったっスね。溜め息というよりは鼻で笑ったようなのが気になるんすけど……………
 ついでにどうでもいいというか…シンタローさんの沽券の為には言わない方がいいのかもしれないんすが、すでにもう女王様と下僕な図になっているッス!
 「……………わざわざ言うなー!!」
 半泣きで言いつつこっちに来るかと思った雷が………スゲー、暴れていた全員に当たった…………
 少し肉の焦げる匂いがするっす………… もう少し火力が強ければリュウさんとクラーケンとガマ仙人と巻き添え食らったリキッドの丸焼きが出来上がったっスね!
 よれよれと立ち上がりつつ蓮の葉に乗ったガマ仙人が窘めるようにシンタローさんに声をかけた。もうまったく台本は用をなしていないんすけど……どうしたらいいんスか………?
 「まったく、老人を労らんか」
 「労って欲しいならもう少し大人しくしていてくれッッッッ!」
 まったくの同感っス。思わず力強く頷いている俺の肩にぽんと手が。
 …………一体誰がこんなナレーター席まで……………
 「ちょっと、いつまでそんな不細工たち映してんのさ! カメラは美しい僕を映す為にあるんだからね!」
 ……………………………それはかなり偏見ある言葉だな、サクラ……
 というかそこまで堂々と言い切れる自信はどこに?
  「ほらさっさとこっちのカメラ回しな! じゃないと遅効性の毒刺すよ!?」
 マジっす。いや……サクラが冗談で行動したことは一度もないんだが。
 ごめんプルル、俺こんな変な撮影で死ぬかも……………
 思わず神に祈りを捧げたくなった俺に同情した視線を向けてくれていたのは、似たような立場にシンタローさんだけだった……………


 で。場所は変わって白雪姫の城……じゃなかった、継母の城。
  その一室が…………………………………………………………
 なんだこの花びらで埋め尽くされたバスルームは………
 噎せ返るバラの匂いをものともしないでバスローブ纏ったサクラが悠々とやってきた。………なんでお前そこまでカメラ慣れしてんだよ……………
 せっせと着飾ってくると思ったのに意外だなーと思ったら、突然全身を映してもあまるだろう巨大な鏡を叩いた。
 壊れるからッッッ! 思わず血の気を引いた俺の耳には壊れた鏡の悲鳴ではなく………虎の悲鳴が聞こえた。
 ……………………タイガーさん……あんた姿見えないと思ったら捕まっていたんスか……
 うわー……めちゃくちゃサクラ楽しそう…………………
 「さ、鏡の精霊! 僕の質問に答えるんだよ」
 「ガウゥゥゥゥ……(タイガー帰りたい)」
 「え? なに、一緒にお風呂入りたいって? このまま熱湯かけてやろうか?」
 ……………………………サクラ、その人を悩殺しそうな笑顔で殺伐とした言葉吐くのよせって………。
 ほら、タイガーさん泣いちゃっているし。好きだからいじめまくるのもどうかと………ってウワッ!?
 高らかな破壊音とともになにかが俺の顔の真横を通りさった……
 こ、これは明らかにサクラの髪…………。ってガラス思いっきり突き抜けているんですが!?
 「キリー……次にいらないこと言ったら避けてあげないからね!?」
 目……光ってます。もうすでに人の範疇超え………いや、なんもないっす!
 ギロリという音さえはっきり聞こえてきたサクラの視線の動きに思わず口にチャックが縫い付けられてしまった。
 よくよく見てみればサクラの髪のあとが……腐食してるし。これ猛毒っていう範囲軽く超えてねぇか!?
 本気で敵でなくてよかった………。味方としてもかなり充分怖いけど。
 「さて、気を取り直して。………鏡の精?」
 「…ガウ…………」
 「なにそんなに怯えてんのさ! ほら、答えるんだよ。お前が世界で一番好きなのは誰?」
 「ガウガウ!(ヒーローとパーパ!)」
 ………………あ、その答えは危険……かと………………
 この上もなく幸せそうな答えに一瞬でサクラの顔色が変わる。…………よしっ、見事な継母役だ!
 と思えたのも束の間。恐ろしい現実がまっていたっす………………


 ――――――――――――――バリバリバリバリバリバリ!!!!!


 ちょっと待てサクラッ! お前自由人でも雷虎でもない癖になんで雷落とせるんだ!?
  いや……それよりなによりいま危ないのはタイガーさんっす! 早く逃げて下さいいぃッ
 馬鹿正直に答えて許される相手じゃないって……なんでこの人判らないんすかね……。そのせいで毎回ひどい目あっているのに。
 ゆらりと振り返ったサクラはほぼ台本通りの言葉を口にした。
 「親父とくそガキ!? 猛毒贈って息の根止めてやるッッ!」
 ………………あの、継母が殺すのは白雪姫で………………
 突っ込もうとした瞬間に頬を一本の髪が掠めていく。…………み、見えなかった………
 毒が入っていたら俺マジ死んでた? ……………………はい。もうなにもいわないっす………………
 かなり本気の入っている殺意を背に感じつつ、俺は再びカメラを映すことにした。
 背中からタイガーさんの悲鳴が……………
 すんませんタイガーさんッ! 俺にはそいつ押さえられないっす!!


  ようやく恐ろしい地から抜け出した俺は一息つきつつ小人の家……はもうなくなっている広場を見た。
 ………………あの、なんで小人たちがいなくなっているんすか?
 「あ……お帰りキリー。なんだかよく判らんが、雷が突然クラーケンに落ちちまってな」
 それはもしや……さっきのサクラの呪い………?
 ちょっと頭を掠めつつも怖いので口を噤んでしまう俺を許して下さい、神様。
 「で、ガマ仙人に手当て頼んだらクラーケン抱えていくのにリキッドがついていって、竜王様に報告にいったリュウもいなくなって、結局残ってるの俺とバードだけになっちまったんだわ」
 …………俺戻った方がいいっスか?
  「ナレーターがいなくちゃ困るだろうが。カメラマン兼なんだからこっち戻ってくるな」
 バードさん…………狙いはよーく判るっす。でも、後ろで髪をヘビに変化させている白雪姫が俺のこと睨んでいるんすよ〜…………
 泣きの入った俺に天の助けのようにシンタローさんが声をかけてくれる。
 「ま、なんとかなるだろ。白雪姫俺たち飯捕ってくるから家で大人しくしてろよ?」
 白雪姫と呼ばれたことに気をよくしたのか、向けられた笑顔にか、とりあえず俺を睨んでいた視線が消えた。すごい………シンタローさんマジックの威力…………
 でもこれ、人によってはさっきみたいな殺意も寄せるんだから困り者っスね。
 楽観しつつ回しているカメラは小人たちの方へ。ウワー……さすがに慣れているのかあっさり獲物とっていってるっス。
 ……………ってバードさん、その先にあるのは人影ッ!?
 「………あぶねぇな、鳥」
 あ、なるほど……わざとっスね!
 バードさんのウイングカッターをやすやす避けつつ振り返ったのは余裕顔の特選部隊隊長・アラシ。
 二人の対峙した間に見事な火花が散っているッス! すげぇ、効果技術一切必要なしっス!
 まさに犬猿の仲っスね……。まあ一回親友殺された身には嬉しくない相手っスけど。
 「テメェの似合わない格好に手元が狂ったんだよ」
 嫌味を言い返したバードさんに思わず俺も納得して頷いてしまう。……アラシは王子役になっているので笑えるほど似合っていない。あ、ちなみに配役はクジ引きっス!
 「ふん、俺がシンちゃん頂いていくのがそんなに悔しいわけね」
 「……残念ながら私が白雪姫なんだケド?」
 勝ち誇ったアラシの言葉を受け継いだのはなんでここにいるんだ白雪姫!?
 …………ってあなた…その手に捕まえているのはまぎれもなくシンタローさん…………………
 あれ? なんか意識ないような…………
 「ああ、こいつだったらそっちの木の影で倒れていたのよ。どうせそれが原因でしょ」
 雰囲気が重い、どうしようもなく重いっすっ!
 白雪姫の視線が冷徹っていうよりもすでに氷点下軽く超えているッす…………ッ
 視線だけで示されたアラシはニヤニヤ笑っているだけで答えないし、バードさんはとりあえず静観してるし(というか威圧されている気がするっス)
 「まあいいわ、どうせまたあんたとは会うし……その時ケリをつけましょう」
 ………すでにそれ、助けてもらう王子に対するセリフじゃないっす、白雪姫……………
 つかつかと帰っていく白雪姫が引きずっているシンタローさんをとりあえず正気に戻ったバードさんが抱えていくのをアラシはなにか企んでそうな顔で見送っていた。
 ヤバい。絶対になにかまだ仕掛けてるこいつ。
 しかも帰ったらきっとシンタローさん狙った継母の刺客が来るだろうし…………


 白雪姫って……姫が小人守る話だったかと悩みつつ、俺はまたカメラの方向を変えた。
 これ……絶対に話終らないな。まさにネバーエンド。
 ………………ヒーローの誕生日のプレゼントっていっていたけど……ほかになにあげたらいいかあとでシンタローさんに聞きに行こう。
 もうすでに当初の目的なんぞ誰も覚えていなさそうな撮影会。
 日は沈んでもきっと安息はこない気がするのは俺だけじゃないっスよね……………

 早く蟲人界に帰して欲しいっス!!!!!






キリリク27500HIT、ヒーローで白雪姫でした。
配役どうするかにずっと悩み続けましたよ………………

アマゾネスとパーパとバードはあっさり決まりました。
続いてサクラが決定。芋づる式にタイガー道連れ(笑)
……………その他全員どうするかに悩みましたねー。人数足りないです。

恐ろしくなにいいたいのか私にも判らないギャグです。ここまで判らないといっそ気分もいいです(オイ)
とりあえず……受難を受けていそうなのはキリーとパーパとこっそりタイガー。
……………人がいいとひどい目にあうという教訓しかこのビデオは与えてくれない気がしました(遠い目)

この小説はキリリクをくださった風鈴さんに捧げますv
毎度よく判らないギャグばっかでごめんなさい………。だからギャグ苦手なんですってば(涙)