今日も空は青くて綺麗です。ええ……そりゃもう腹立つくらい平穏にな!!!!!!
思わず現実逃避で空眺めていた俺の耳に入ってくるのは一応内緒話らしい兄弟の叫び声。
「だからリキッド! 言ってるだろう!? 当たって砕けろ! いっそ押し倒してこい!!!」
「なんで俺があんな男にッッッ!」
「………フフ……リキッド顔真っ赤だよ………。ほらみんなも見てあげて……。あっちの髪長い人が思い人」
「見えない輩に紹介すんなー!!!」
……………もうちょっと小さな声でしましょうね……みんな。そして本人のいないところで…………
というかそもそも……なんでこんな場所に俺いるんだろうな………。かなり後悔入ってきています。
弟からかうの楽しんでいるのはいいけど、俺をダシにすんのはやめて欲しいんだよな……。大体俺、男だし。
深い溜め息を吐けばいきなり真横に人の気配。
…………だ、だれだっっ!? 気配まったくなかったぞオイ!
「あー、すんません、包帯切らしちまったンでもらえますかね?」
あ、乱世か。そういや超人の気配なんて俺らには感じられないんだっけか。普段はわざわざ見せてくれてるからついそっちで慣れちまってた。………って包帯………?
すっごく嫌な予感とともに乱世の指の差すままに首を向けてみる。
……………………………………………。
ふー………血溜まりが出来てやがるな……。何だってヒーローの兄弟はこうも素晴らしく個性豊かすぎるんだ?
思わず遥か彼方を見ながら汗を拭ってみました。ああ、冷たい視線が!!!!
「ちょっと待ってくれ……俺もここに来るの久し振りだからなー」
そう。ここは本当に久し振りに来る。どこかって? 親父の城だよ。………にもかかわらず親父がいない。
なんかちょうど行き違いになっちまったらしいんだよなー。おかげで何故かやってきたこいつらの面倒を押し付けられた。
………………まあ確かに一般人にこいつらの行動理解してやってくれというのはきっと無理だろうけど。
ガタゴトといろんな場所を探してみる。人を呼べば早いのはわかってるけど……この惨状見せるのは忍びないしなー。
お、あったあったv さすが元は俺の部屋。昔のまんま隠していたもんまで置きっぱなし!
ってことは………俺がこの家出てからもうかれこれ10年近く経つっていうのに……親父はそのままにしておいたのか? 妙なところで律儀だな。
ちょっとほんわか気持ちがあったかくなった俺は満面の笑みで手にとって包帯を渡そうと振り返った。…………瞬間になにかが思いっきりぶつかってきて椅子から落ちたけどな。
「ちょっ………やめ…………ッッ!!」
落ちる寸前で聞こえた悲鳴に近い叫び声から一応何が当たってきたかはわかった。
ついでにいうなら大体の経緯も想像出来る。嫌だがきっと当たっているだろう。
でもな! どんな理由があっても目的があっても! 痛いんですけど!?
いくらナンバーワンだからって一応痛覚はあるし、思いっきり油断していたから受け身もとれなかったぞ?
したたか打ち付けた腰の痛みにちょっと生理的に涙まで浮かんだ………。戦いの最中だったらこの程度気力で押さえ込むけど、日常生活内でまでそんな真似できるかっての。
一緒に巻き込まれたらしいリキッド……いや、正確には俺が巻き込まれたのか。とにかくリキッドも勿論同じように床に転がっているが、当然ながら俺が下敷きなんで退いてくれなけりゃ立てない。
痛みに耐えている間にでも退くかなーと思ったけど、顔にかかる影がなくならないからそのままらしい。どうしたんだろ…………?
訝しんで目を開けてみれば………何故真っ赤な顔で人に覆い被さったままでいるかなこいつは……………
「………リキッド………?」
どこか打ち所が悪かったかと思って声をかければ一瞬で立ち上がったよ。すごい背筋だな。俺でもあそこまでは出来ないぞ。もうちょい鍛え直そうかな…………
なんてことを考えていた俺の耳に嫌〜な音が。
「フフ……リッキーの青春写真ゲット。早速クーリンに送ったよ………v」
「本気でやめて、お願いだから!!!!」
クーリンってクラーケンのことだよな!? あそこには一番迷惑な奴が住んでいるんだよ!!
来る。絶対に奴は来る!!!!
サーッと頭から血がなくなっていった俺の顔面蒼白な態を尻目に、兄弟たちはなおも話し合っているけどな!!! 「どれどれ見せてみろ。おお! ベストショットじゃねぇか!」
「………それより忍にーちゃん…………手首から血……………」
誇らしげに携帯画面見せるのはいいけど、確かに血が止まることなく出ているよな………。っていうか、もうすでに確実に輸血しなきゃいけない量は出血してんのになんであんた普通に立って話していられるんだ?
とりあえずここは逃げる前に止血くらいはしておいてやらないとな。
こっそり近付いてちょっと腕を拝借。
ピ!
「………あ」
…………………………………………え?
い、いまの機会音は一体…………
全員一致の声も怖いし、嫌な予感とともに3人を仰ぎ見てみれば……………ああ、なんか怖いくらい「やっちゃった」って目が!!!
何があったんだいまのは!!!
「とりあえず…………祝言の用意しないとなー。これだけ盛大に広まっちまったら」
「……兄者……拙者の書いた挨拶の文…………」
「……………忍、お前の弟を思う気持ちはにいちゃんよ〜っくわかった。だから弟の幸せを思うならそれは火葬しておいてやれ」
「たったいま人が包帯巻いている傍から手首切ろうとするなー!!!!」
無言のまま取り出された剃刀を速攻奪って叫んでみるが……それよりもっと言いたいことが。果たしてこの人たちに通じるかどうか………………
「で、さっきのは一体…………」
「それはそうとシンタロー殿。晴れて家族の一員になることだし、部屋割り決めんとな!」
「……あと花嫁衣装も……………」
「ヒーローも天界に定住するかな、この人くれば」
「いや。人の話を聞いて下さいっていってんだよ、あんたら」
ちょっとかなり笑顔が空笑いになりつつ慇懃無礼に言ってのけてみました!
………効かないことくらいわかっているけどな……………………
「まあとりあえずこっちで必要なものは揃えておくから! 日を改めてまた挨拶にでも」
「……………招待状、作らないとね……」
「忍、にいちゃんが作るからお前は名簿確認だけでいいぞ」
駄目だ……とりあえず兄二人には話が通じないことはわかった。我が道行く人たちだからな…………
それならターゲットはひとり!
暴走し始めた兄たちを慣れた仕草で見守っている3男を捕まえてちょっと隔離!
………近くにいたらまたなにちゃちゃ入れられるか……………
「ちょっとリキッドこっち来い!」
「おわ!?」
髪を掴んで有無をいわさず部屋に隅へ。ふう。よかった。あの人たち自分の世界に入ってくれていて。ちょっとまた床が赤くなっているのが気になるけど………
「で? 一体何がどうしたって? わけがわからないんだが………」
じっと真剣な目でリキッドに問いかければ……何故視線を逸らす。
悪い予感が思いっきりする。というか……俺いままでいい予感なんかしたことないな、そういえば。
「いや……ちょっとさっきのずっこけた時の写メールが送信されただけで……」
「………………………………………誰に?」
かなりしどろもどろにいうリキッドの口調は重い。この上もなく!あの無礼極まりない態度ばっかの男がここまでしおらしくするからには、絶対に俺の身になにか降り掛かる!!!!
「シンタローッッッッッッッ!!!!!! なんじゃあの映像はッッッッッ」
「お、親父!? 映像って………送ったのか親父に!?!?!?!?」
「いや……さすがに人王のメルアドは入ってなかったと…………」
怒っているというか……泣きむせてる!! はっきりいって雨が降り注いでいるのと大差なし! どうでもいいが壁壊してまで急いで部屋に入ってくるなーッッッ! あんた何のために俺の部屋わざわざ残しておいたんだ!?
思いっきり胸倉掴んで揺さぶりながら叫んだ俺にリキッドが不思議そうに返す。…………よくこの震動の中で舌噛まないな…………
大慌てな俺たちのところに人影が……はっ! そういえばあいつが来るから逃げようとしていたんだった!
「よ、リキッド。シンタローに手ェ出すなんて度胸あるな。ヒーローが聖王剣携えてさっき天界から下りていってたぞ」
「ガマ仙人!?ってヒーローが帰ってくるんですか?」
想像していた奴ではなくてホッと息を吐くのも束の間。ヒーローたんが久し振りに帰ってくる! 思わずガッツポーズをとっている俺の耳にはすでに不吉そうな単語は入ってくる余裕なし!
なんて思っていた俺の首根っこを誰かに掴まれた。………だから痛いっていうのを何故わからん過去の若者は。
「とりあえず……逃げるぞ」
「は? だってヒーローが………」
「まあその方が得策だろうな。おいシンタロー、こっち向け」
「いや、だからガマ仙人…………」
折角の再会を何故邪魔しようとするのかと問おうとしたら……………口塞がれた。この人……ガマの姿の時だけじゃなかったのか、キスが必要なの………………
この上もなく嫌〜な顔を晒してみれば、これまた対照的にこの上もなく楽しそ〜な顔のガマ仙人。いい男なだけにむかつくな……………
「ま、情報料はこれで勘弁しといてやるよ。リキッドに飽きたら俺のとこ来いよ」
にっこり笑顔でなんかすごいこと言われている気がしマス。あえてもう記憶に留めたくないんで右から左。凍った笑顔で手を振って…………いたら半強制で空に浮いたー!!!
ちょっ、リキッド待て! まだ俺羽出してないッッッッ
慌てた俺もどこ吹く風、人を掴んだままのリキッドを仰ぎ見てみればおもいっきり中指立ててガマ仙人に宣戦布告しているよ。一応年上の人間は敬わんといかんぞ。
「こんのエロボケガマ!! 今度会ったらぶん殴るからなッッ」
「それ相応の実力つけてから来るんだな」
…………あっさりかわされてるけど………………。まあいいか。とりあえず親父のことを頼むと手を合わせてガマ仙人に示し、承諾をもらってから俺は自分の羽を出して空に浮かんだ。
………………………はあ…………なんか……今日は家に帰れるのかな………あの状況があそこだけで終ってくれるとはどうしても思えないが………………
「で……リキッド。一体誰に何を送っちまったんだ?」
「……………………………」
………だから何故そこで顔を赤くする。なんなんだ一体。俺なにかしたか?
無言で示されたのはリキッドの携帯画面。そこに映されているのは勿論俺とリキッド。さっきの転けた時の撮られた奴。………なんだが!
痛かったから俺……顔顰めているしちょっと涙なんかも浮かんでまして。その上、下敷きにされていたんだから当然リキッドがのしかかってます。しかもなんか間の悪い瞬間だったのかなんか……えっと…………キスでもする瞬間のような……ショットに……………………
……………………端から見てみりゃそりゃ妖しい姿。
こんなの見たら親父も壁壊してでも安否確認にくるわな…………………
ガンガンと盛大な頭痛を携えて俺は顔を覆いながら最後の確認をした。
これだけは知っておかないと、訂正にもいけないしな。
「で、誰のところに送っちゃったんだ?」
「……………なんであの場にいたオレの携帯にも送られていると思う?」
言いづらそうにどこか遠くを見つめていった言葉に目の前が暗くなりました。
もしかしてそれは……アドレス知っているヤツ全員に送信されちゃったってことでしょうか?
………………………………………………………
凍り付いたまま真っ白になった俺をとりあえず安全圏に引っ張って行くリキッドが優しいのかどうかは正直判断つきかねたけどな…………………………
キリリク56000HIT、ヒーローで「パーパ争奪戦で乱世・忍・リキッド・ケエル・人王も出演する話。」でした!
別にギャグと言われませんでしたが、ギャグで終らせてみました。………真面目にやったらやったで………ただのリキッド×パーパだけになる気がしたもので……………
このあとどうやってパーパが収集つけたのかと、ヒーローの怒りをどう押さえたのかが気になります。
………なにより一番初めにやってくるのはおそらくアラシ。アハハ〜危険だね。
でもリキッドの方が強いはずだし、パーパに庇われる可能性が大。
無意識にリキッドの手綱を繰れてます、パーパ!!!!
今回は争奪戦と言うよりはリキッド&パーパ受難話ですな。リキッドは……多分喜んでいるだろうけれど。内心は。態度はまるで逆なお子様(笑)
おそらく争奪戦というに相応しい荒れ模様はこのあと展開されるのでしょうが………多分誰もまとめきれない事態になる予感。
ブラックヒーローの暴走を止められる人はいないだろう……………。
まあどっちにしろパーパが間は入ればそれで万事まとまるのだろうけれど。パーパが一番貧乏くじv
この小説はキリリクを下さった華鈴様に捧げます。
久し振りの争奪戦&ギャグ&ヒーロー(汗)でかなり感が鈍ってます………。こんな作品ではありますが楽しんで下されば幸い!!