キョロキョロキョロ。たったったーっ!
どこか子供っぽい擬音で辺りを伺いながら走っていく二人を見送りつつ、まだまだ修行の足りない3男を見やる。………まるで気配に気づかなかったな、あいつ。自由人は仕方ないとして、超人の戦士の癖に。
帰ってきたらもう一回ヒーローと修行させるかね。…………焼きもちで殺されっかな?
「兄者……リキッドたちが………」
間近で低い声。相変わらずな次男に目を向けながらニッと笑ってみる。リキッドたちが走っていったのには勿論わけがある。ついでにいえば、それをちゃっかり追跡して楽しんでいることもそれなりに。
ま、もっとも天界で待ちぼうけ食わされているヒーローがどう思っているかは知らんが。八つ当たりされるのはリキッドだからよしということで♪
「ああ、この先だな。さ〜て、しっかり働いてくれるかね?」
思いっきり楽しみ。特に二人のリアクションが!
ちょっと意地の悪い……というより悪役らしいセリフを吐くと忍の溜め息が聞こえた。………オイオイ、お前だって止めなかっただろうが。そう思って視線を再度向けてみれば………おい、お前どこ向いているのかな?
「そう……あれがうちの長男。弟で遊ぶのが趣味なんだよ……」
「忍、見えない奴に適当な紹介するなよ。にーちゃん破修羅で斬り付けられねーから」
渇いた笑みでさり気なく怖い言葉をいってもあまり効かないことはよ〜く分かっている。ああ、またなにか愚痴を見知らぬ奴に!
………い、いや、ここでこいつの方ばかりに気をとられていたら本気で二人を見失う。さっさと追い掛けよう。無視したらザシュッてヤな音響きましたが。振り返りたくなくともそれはそれ。みすみす捨てておくわけにも行かないので結果の分かった答えを確認。
………………………………………………ふう。
さて。……包帯は……どこだっけかね……………………
改めて追い掛けてきた俺たちはやっと二人を発見!
無駄な時間食っちまった!!いや、予想はしていたが。もうあと数回くらいは同じことやらかすだろうから手首に鉄の腕輪巻き付けた。…………あの程度でどうにかなるかな………………?
まあ今日は多少のことには目を瞑ろう。血が足りなきゃあとで足しゃ平気だしな!
さて。ここはどこかな? んっと……おお、標識発見!なになに「海人界名所冥界門跡」。
……商魂逞しいな、オイ。
海人界ねぇ……初めはどこに行く気だ、あの二人。ここだと……あのアイスボンバーの坊ちゃんのところかね。しかし。随分警戒してんな、あの人。別に危険地帯ってわけでもなさそうなのにな?
どっかの家のドア叩いてすっげー妙な顔して待ってら。おーいリキッド、そっぽ向いてないでなんか声かけろ。一緒にいる意味ねぇじゃねぇか。判ってんのかね、自分達のいまの状況。二人っきりで天上界まで御案内vなんてそうそう出来ないデートコースだぞ!まったくにーちゃんの親心まるで知らんな!
「や〜ぱりシンちゃんじゃねぇかv」
「ギャーッッ!!!やっぱり妙な場所から出現しやがったーッ!」
をを!? なんで背後から部屋の住民らしき奴が!? しかも突然現れて意味なくシンタローを羽交い締め。あれくらいの積極性がリキッドにも欲しいもんだ。見事なシンタローの悲鳴も響いてますが。さすがに度胆抜かれたらしいリキッドもここまで悲鳴を目の前であげられて茫然自失はしてないさね。
ベリッとそれはもう見事な擬音付きで二人を剥がしてさり気なく背中に庇う。おーよしよし、なかなかイイシーンだ!ほら忍、地面に五十音書いてないで写真とっておけって!
あとでリキッド初デート編と銘打ったからかいアルバム作らなきゃな☆
「あ〜ん?なんだ、見慣れねぇ顔だな。なにシンちゃんと一緒にいんだ」
「けっ! テメーごときに教える必要ねぇよ」
おおっと、早速不良同士でぶつかり合いだー! 後ろでオタオタしてっぞー、話題のシンタローが。って二人とも気づいちゃいねぇな。そんなもの無視して喧嘩でもおっぱじめるのかねー。辺りに地響きしていますけど。ちゃんと力加減出来んのか、あいつ…………
ちょっとワクワクしながら見守っていたらガシッとリキッドのこと捕まえる腕が。………あのメンバーの中だから明らかにシンタローだが。おーおー、湯でタコ一丁出来上がりv
目の前ではワナワナ震えている金の髪。なんつーか、地獄に落とすって考えているのが明らかな表情と気配だな。………なんかそれにシンタロー、思いっきりびくついてますけど。
「だ、だからアラシ…少しの間オレ天上界にいくから、家留守にするって言いに来ただけで………」
「ほー、それでその若いのとバカンスか?」
「リキッドはヒーローの兄貴だっ」
みんながみんなお前と同じだと思うなと泣きが入りつつ叫んでいます。アッハッハ。後ろでちょっとどんより雲背負っている奴をぜひ見てもらいたいなv
なんとかこうとか必死で説明してとにかく家の方には来るなと厳重な念押しをしているが……一体普段なにされてんだ、この人…………。ここまで家あける間に来るなと言い渡される奴も珍しいよな………
って、おお! なんて奴だ! しっかり会えない間の我慢料とかいってキスかましてる! リキッドっつーギャラリーいるのもお構いなしか!
……………あーあ、プチって音がしたよ。絶対に。聞こえないが判るって。一気にごっと嫉妬の炎燃えさせてあっさり奪い返したシンタローを抱えて空飛んでいっちまいやがった。ちなみに足元では潰れかけた相手が………成仏しろよ……………
「兄者……アラシって奴呼び出しても………」
じっと地面にめり込んだ相手を見ながら忍がこっそり確認。
……………………やっぱ成仏せずにしっかり生き残れッ!
「リキッド!いくら地上の奴嫌いでも無闇矢鱈に喧嘩するなよ!」
「あんたはなんでわかんねーんだ!?」
空の上でぎゃーぎゃーしている二人を同じく空飛びながら尾行しつつ観察。……今回に関してはリッキーが正論だな。あのまま見守っていたらあんた押し倒されてたぞ。
なんて冷静な俺ら超人を無視して彼は問題発言かましましたv
「だから!あいつのあれは昔っからの悪戯なの!ほっときゃ飽きるからいいんだよっ」
「飽きるどころか悪化するッッッッッッ!!!!!!!!」
怒号のごとき大声にびっくりしたみたいに目を丸くしてリキッドを眺めている様子じゃ……まったくもって理解していないな。心外といわんばかりだし。
本当になー、確かにリキッドの言う通り。なんでわからねぇんだか、この人。張本人の癖にねぇ。警戒心なさ過ぎなことにある意味驚きの拍手を贈ってしまった。
怒っているというか…どっちかというと危ぶんでいるんだろうが、思いっきり顔顰めたリキッドに困った顔して。同じ趣向なわけじゃないが、確かにそそるわな。これだけ落差ある奴は泣かせてみたくなる気持ちも判らなくも。…………兄弟で取り合いする気は更々ないが。
「怒ってないか、お前………?」
「あんたがもう少しまともに対処出来てりゃ怒らねぇよっ」
「…………いや、だからアラシはちょっと特殊というかなんというか………ああいう奴だからな。気にするなって」
ポンと肩叩いて慰めて。あんた………そりゃちょっという相手間違えちゃいないか? むしろあんたがいわれる言葉。判ってないね〜。惚れた相手が手ぇ出されてんの判って気にしない奴の方がおかしいっての。まあ素直でないリキッドがそれ伝えられるわきゃないが。伝える時にはしっかりDVDにでもおさめねーとな!
「あ、リキッドストップ!こっちちょっと寄らねぇと!」
ふよふよ浮いていたシンタローが突然方向を変える。方向音痴っぷりを聞いているからリキッドの奴慌てて腕掴んでら。意識してたら一生出来ねぇだろうに。これも写真に残しとくか♪
「どこ行く気だあんたはっ」
「いや、ちょっと竜王様のトコ。親父出掛けてて声かけられなかったし、出立くらいは誰かに知らせないとな」
もっともな言い分にちょっと渋い顔をしながらもリキッドの腕がぐいっとシンタローを引く。おお、そのまんま抱き締めるか!?
「………わかったけどな、そっちは逆方向だ」
「………………………………すまん………」
ちっ、お子様め。まあそれでも手を繋いだまんまであることは褒めておこう。やはりこれが基本だよな。端から見ると異様だが。
「竜王の城………クーリンに挨拶の手紙を…………」
ボソリと呟いて何やら飛びながら筆を取り出している次兄を振り返る気にはちょっとなれなかった俺の現実逃避を責める奴はいまい。
「あ、クラーケン!」
「…………なぜここにいる」
竜王にさっさと挨拶を終らせるとちょうど坊ちゃんに出くわしてた。………随分長い間竜王の子供自慢に付き合わされていたのによくもまあその原因に笑顔で声をかけられるな、あんた……………。待っていた俺らも疲れたってのに。隣にずっといたリキッドなんぞぐったり憔悴して「やっぱ地上は好かねぇ」と何度ぼやいているやら。
「ちょっと天上界に行くから竜王様に挨拶に来たんだ。……で、悪いんだが、あとでアラシのトコに誰かやってくれないか?」
「お前はまたッッッ」
「あのまま放っておくわけにもいかんだろ」
「……どうしたんだ?」
「ちょっとリキッドと喧嘩してな。無事は無事なんだが、一応様子だけ…………」
「生きてんなら冥界まで落としてきてやろうか」
「だからリキッド!」
ぼっちゃんとの会話が見事なくらいリキッドに邪魔されてら。まあそりゃそうか。なんだかんだでこのぼっちゃんも一応ライバルの一人だし? 本人に自覚ないから可愛いもんだと思うがね。
「とりあえず、帰る途中に寄っておく」
「あ、そうか。悪いな。頼んだ!」
溜め息付きで二人の口喧嘩にも似た言い合いに終止符を打ったのは勿論ぼっちゃん。いった言葉にパッと満面の笑みを向けられてなんだか目元が赤いねぇ。しっかりいつ帰ってくるかとその時に寄ること確認している辺り抜け目がないのかただの性格か微妙だが。
……………………な、なんだ。背中が妙に薄ら寒い気が…………
嫌な予感とともにちらりと後ろに視線を送ってみる。あんまり振り返りたくなかったんで視線だけ。
「フフ………クーリン…………逃がさないよ…………v」
別の意味である意味嫉妬の鬼かあんたは。
死神が背後に見えるその手紙をどうするつもりかあまり聞きたくない俺はとりあえず別行動目論んでいる忍を放っておくことに。………その方がきっと俺たちにとっても平和かもしれん。なんだかんだであのぼっちゃん面倒見いいし。
ちょっとかなり悲痛な叫びにも似た必殺技の声が背後から谺していたが………ガンバレぼっちゃん!若いうちの苦労は買ってでもするもんだぞ!………まあ寿命からいって一生つきまとわれるだろうけど…それはそれ。運がなかったな!
さーて、最後の難関は天上界直通の出入り口の門番だ!
きっちり親友には今回のこといっておいたからな。ベストシーンを多く作ってくれることを祈るぜ。
………なんとなくかなり本気で手を出す気でいたような気がしなくも……ないというかなんというか。まあその辺はそれ、楽しけりゃどっちとくっつこうが俺には別に。
ヒーローが最終的決断を下すだろうしな♪ まあ世界崩壊起こす前に止めが入ればいいだろう。最終兵器は結局取り合う本人たちじゃなくて、取り合われている本人なんだしな。
蛙の門を見上げつつ寒いと喚いているシンタロー。………お前の服装見ている方が寒いんだが。まあ俺ら超人には天候の落差はたいした問題じゃないんだがね。
自分の上着押し付けつつちゃんとやってきたリキッドには拍手。た・だ・し!この先に待っているガマ吉は情け容赦ないからなv ………正確には遊んでやれと焚き付けたともいうが。
モニター越しに初々しい二人を見てきっとほくそ笑んでんだろーな。アルバム1冊出来上がるまで活躍してくれるかね。もうすぐ日も暮れる。夜になるまでにシンタローを連れて来れなきゃ待ちくたびれたヒーローも乱入するかな?
想像しただけでもドッキドキワクワクのどんちゃん騒ぎだな♪
一番イイ見学場所を探しつつ、楽しみに震えるのは仕方ないさね。なんせず〜っと退屈極まりなかったしな。
シンタローっておもちゃがあるだけでかなり楽しめるし……いっそ天上界に置いておこうかね?
少し本気で物騒なことを考えつつ、同じこと考えているだろう親友にウインク1つ送って健闘を願っておいたぜ。
もうしばらくは楽しませてくれよなv
キリリク58000HIT、「リキッド×パーパで二人のデート(妨害付きで4兄弟出演のギャグ)」の前半でした!
………あんまりにも乱世視点がひどくて……人様に捧げるレベルじゃねぇ!!と逆ギレしちゃいましたv
おかげで待たせまくっていたにもかかわらず更に1日待たせましたよ……まあ1週間待たせなかっただけでもまだマシですかね………(確かいまの所最長待たせ時間は1週間)
とりあえず、ヒーローの我が侭でシンタローは天上界へ!という想定で。
呼び寄せるにあたって道案内がリキッド。シンタローの方向音痴っぷりからいってたどり着けませんからv
サクラのところに行くのも考えたんですが(タイガーのコト頼みに)入りきりませんでしたv ガマ吉も然り。
…………どう考えても確実に一番いい目にあうでしょう。引き際心得ているからヒーローに八つ当たりもされない(笑)
なんでどうせなら書き直しはそこからにしてみました。ガマ吉ばっかし(笑) …………結構好きなのかしら………自覚ないけど。