笑顔の価値は、きっと人それぞれ。

それでも……この魂を捧げるに相応しいものは確かに存在すると、思うのだ……




微睡みの中で



 赤子を抱き上げる男をみながら、虎はのんびり日にあたっていた。
 やわらかな陽射しは世界を暖かく包んでいる。
 ……穏やかで平和な、最も愛すべき日和だ。
 虎は微睡みながら薄く目をあける。
 狭い視界の中には、父性溢れる笑顔を赤子に向ける男と、その笑顔に喜ぶ赤子。
 幸せを形とした、寄り添うものさえ温める家族。
 とろけそうになるほど自分もまた、それに包まれている。
 閉じられた虎の目に気付き、男は空を見上げる。
 ……雲が疎らに浮いた、濃い青が視界を占める。
 こんな陽気の日では、のんびりモノとなった虎にとってこの上もない昼寝日和だろう。
 口元に灯る笑みを赤子に見せながら、男は虎の傍に近付く。
 「ヒーロー、俺たちも少し寝るか?」
 優しい声が問いかければ、赤子はその頬を父のそれに寄せ、虎と男の間を陣取ろうとする。
 幼いその反応に微笑みながら、男も虎の横で目を瞑る。
 穏やかな陽射しと風が、三人の睡眠を妨げないよう微笑んでいた………


  ゆっくりと開けた視界の中、突然男の顔が大きく映る。
 「………………!」
 驚いた虎は手の中に包んでいる重みに気付き、またいつの間にか共に眠っていた事を知る。
 腕の中、眠る小さな存在は幸せそうに微笑んでいる。
 それは父である男の愛情を一身に受け、男に親炙(しんしゃ)し、誰よりも男と同じ魂となりゆく赤子。
 その微笑みは、ひどく男に酷似している。
 「……タイガーは本当に子供が好きだな」
 不意に響いた声に、タイガーの身体がびくりと反応する。
 シッポすら立てて驚く虎に、男は苦笑した。
 その手の中にいる赤子を受け取りながら起き上がり、男は幸せそうに微笑む。
 それを言葉もなくタイガーは見つめていた。
 「まあ、ヒーローは俺にとって特別だから、お前も好きになってくれて嬉しいよ」
 穏やかな口元の笑みに、虎は引き込まれる。自分よりも強いとは思えないほど、この男はひどくやわらかな顔をする。
 「…ヒーロー……パーパの特別?」
 高鳴る胸を持て余し、タイガーは男の言葉を繰り返す。
 まるで幼児が言葉を修得しようとするような虎の反応に、男の視線が愛しげに柔らかくなる。
 まだ眠る赤子を優しく抱き締めながら、綻ぶように笑みを落とし、小さな声が囁く。
 「……ああ。この子がいたから、俺は俺を取り戻せた」
 「……………………?」
 言葉の中にある深い感情が読めなくて、虎は奇妙な顔をする。それさえ包むようにシンタローは笑い、虎の頭を軽く撫でた。
 「この子の笑顔が、俺にとって平和の証なんだよ。だから、この子にはいつだって
 笑っていて欲しい」
 たとえ苦しくて仕方なくても。
 たとえ悲しくて仕方なくても。
 ……その全てを受け入れ前を見る事の出来る柔軟な、強い魂をもつ子供となって欲しい。
 愛しい愛しい子供を抱き締めながら男は寂しそうに笑う。
 その笑みに虎は困ったような顔をして、ぺろりとその頬を慰めるように舐める。
 獣の優しさに苦笑して、シンタローは返礼のようにその頬に唇を寄せる。
 それを幸せそうに受け止めながら、虎は囁いた。
 「パーパは、ヒーローが笑ってると幸せか?」
 「………?まあな。幸せだよ」
 言葉の繋がりが判らなくとも、虎の目は真剣で。
 シンタローはその目を細めながら柔らかく答える。
 それにタイガーは満足そうに笑い、宣言をする。
 「じゃあ、タイガーも幸せだ」
 「………………?」
 目をぱちくりさせる男の顔を覗き込みながら、虎は優しい笑みで拙い言葉を必死で繋げる。
 「パーパは俺に安心くれたから。パーパ笑ってると、タイガー嬉しい。……だから、ヒーロー笑ってるの、嬉しい」
 幼い言葉はそれでも誠実で。
 こぼれ落ちる涙さえ、暖かくする。
 「パ、パーパ!?」
 突然流れるその雫にどうしていいかわからない虎が困ったように叫ぶ。
 それに答えるように微笑み、シンタローはタイガーの胸に額をのせる。
 こぼれる涙が、虎のズボンを彩る。
 濡れる頬を包みながら、虎はその顔に唇を寄せる。
 ………こぼれる涙の全てを、虎は獣の優しさで嘗めとった。
 いつしか重なる唇さえ、男を包む優しさと同じだった…………






前から考えていた虎パー!
こいつらはもうこんな感じにほのぼのしててくれって感じです。
だって一緒に住んでるのにギクシャクしてたら子供に悪い!
ので今回欠片もバード出しませんでした(笑)
収集つかなくなるので……
今度はバードかアラシだ!
さーて、どんなのになるかな (自分の首自分で閉める発言ばかり……)