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 その日はイイ天気の日で、俺は自分の一人息子との久々の逢瀬の幸せに浸っていた。
 冥界との戦いも終わり、秘石もなくなった今、もうこの世界で戦争が起こる心配はない。
 泣きついてくる友人たちを抱き締め返しながら、また前のような平穏なただの自由人として森にいれると、正直嬉しかった。
 幾日かたった今も、その充実感と幸福感は手にとるように鮮やかに残っている。
 「だっていうのに………」
 起こる頭痛に俺は自分の頭を押さえる。
 「なにが、だっていうのになのさ」
 愛らしいボーイソプラノの声が答える。自分が喋ったせいで化粧がしづらいと目がいっていた。
 後ろには笑いを堪えているリュウや心配そうなタイガー、純粋に楽しみにしているヒーローが待っている。
 ……それにまた大きなため息をつく。
 「なにため息ついてんだよ」
 目の前に座る諸悪の根源が楽しそうな嬉しそうな顔を隠しもしないで椅子にもたれ掛かって自分を待っている。
 なんでため息ついているかなんて、テメーが一番よく知ってんだろーがっ、バード………!!
 引きつりそうになる頬をどうにか自制心でおし止め、おもちゃを彩る手付きのサクラを見上げる。
 「ほら、花嫁がそんな顔してちゃ、イイ服選べないよ!」
 意地悪気な顔をして囁くサクラを憮然と見上げても、きっと迫力はないだろう。このそこらの女の子より綺麗な顔をした男の手で、自分もまた女装させられていう真っ最中なのだから!
 なんでこんな事になったかなど、簡単すぎる。
 いつものパターン通り、おばさんの嫁催促を振り切れなかったバードが、またまた俺たち英雄に女装して乗り切るのを手伝えといってきたらしい。
 ……何故らしい、かといえば……俺は覚えていないからだ。久し振りに英雄たち全員で飲もうといつものメンバーでバードの家に集まって、やたらと勧められる酒を断り切れずかなり飲んだ記憶はある。
 その後の無くなった記憶のなかで、俺がこれを安請け合いしたと全員が証言しているのだ。
 そんなはずはないといえば、ヒーローが女装姿を見てみたいといったのが決定打になっていたとヒーロー本人からまでいわれてしまった。
 どんな事でも一度交わしてしまった約束だ。守るのが男というものだろうと諦めていたが、……かなり後悔している。
 なんでって………
 「おいサクラ!お前の服、切れ込み深すぎるぞ。もっと大人しそうなのないのかよ」
 「うるさいなー!もともと僕とこのおっさんじゃサイズ違うんだからイイだろ!お前好みのついでに買ってきてやったんだからそれで我慢しろよ」
 「………俺は買ってくる量は逆を指定したはずだぜ?」
 「バーカ。僕がついででも買ってやっただけでも有り難いと思うんだね、変態」
 サクラを殴ろうとするバードをとりあえずなだめているタイガーの図が視界の端に映る。
 大量のサクラの新しい服は、俺用の巨大な服を買ってくる駄賃らしい。……ここまでなぜか気合いの入っているバードは初めて見た。迷惑な事だとまたため息を吐く。
 「しかしあんた、思ったより肌荒れてないな。髪も痛んでないし。絶対にボロボロだと思っていたのに……」
 不思議そうになにかを顔に塗っているサクラの声に、目を瞑ったまま答える。
 「そうかー?まあ、バードがここに住むようになってからは2日にいっぺんは泊まってるからな。ヒーローやタイガーもしっかり管理されてるぞ」
 「ふーん。やっぱり将を射んとすればまず馬からかなー。僕は最初っから将を落とせるけどね」
 サクラらしい物言いよりも、その前の言葉に寒気を覚える。
 引きつる顔を自覚しながら、手を休めたサクラに言葉の訂正を求める。
 「サ、サクラちゃん……。その言い方はちょっと違うと思うよ?」
 「なに言ってんのさ。あってるじゃん。あいつ、本気であんたを嫁に迎える気だろ?」
 「………おばさんの目を逸らすだけ、だろ?」
 不安そうな声で同意を求めてみる。……かなり情けない顔をしていたのだろう、あのサクラの目に少しだけ優しさが浮かんだ。
 もっとも、その笑顔で地獄に突き落とすのが常なのだが!
 「あのハリキリよう見て、そう思う?」
 着る服からつけるアクセサリーまで。全部をバードは揃えている。今もなにか悩みながら服を取り替えていた。………なに考えてんだこのバカ鳥は…………………
 悩みに耽っている俺の顔に黙々とサクラは化粧を施す。最後に口になにか触れる。……なんだこれ、凄く嫌な匂いだな。女ってのはこんな匂いに我慢してまで化粧してんのか。
 ある意味偉大だ。
 「ほらバード、出来上がったよ、お嫁さん」
 くるりと俺の座る椅子をまわし、待っている後ろの男どもの方を向けさせる。
 見られたくなくて思わず俯いてしまう。……サクラもリュウも、よくこんな事されて平然とみんなの顔が見れたな。
 情けなさに顔が赤くなっていくのが判る。
 「んー、よく見えねーな。ほら、顔あげろよ、シンタローv」
 ………リュウのヤツー、完璧楽しんでいやがる!龍人は長寿な分どんな事でも楽しむようになってんのか!?
 声に答えずに俺はそっぽを向いた、無駄な抵抗だろうが、男としての沽券があるんだよ!
 面白そうな含み笑いが聞こえる。すぐ傍に立った男の気配。……諦めてまた俺はため息を吐く。
 顎を捕まれ、無理矢理顔をあげさせられる。
 目に映ったのは呆けてるリュウの顔。……ほら見ろ。モロ男顔の俺が化粧したくらいで変わるわけねーんだよ。
 盛大に笑われる事を覚悟し、顔を背ける。
 「うわー!おっどろいたっス!」
 びっくりしたとよく判る声で最年少のキリーがぴょっこり顔をだし、俺を見る。
 まだ固まったままのリュウも気になるが、一体なににそこまでキリーが驚いているのかも気になる。
 「わー、パーパがマーマに大変身!綺麗だぞー」
 「ヒ、ヒーロー?」
 嬉しそうに弾んだ息子の一言に俺は顔を引きつらせる。
 一体なにがどうしたっていうんだ!?
 みんなの反応がおかしすぎるぞ!?
 助けを求めるようにタイガーを見上げれば……目にいっぱい涙をためている。
 だから一体なんなんだよ!!
 「タイガー?一体どうした!?」
 驚いてその顔を覗き込めば、いつものように抱き着かれる。
 なんなのかと思えばぽつりと一言。
 「……タイガーもパーパお嫁に欲しい」
 「なにぼけとんじゃ!」
 言葉と同時に足げにしてタイガーを剥がせば、今度は後ろから手がのびてきた。
 こっちにいたのはたしかリュウかな?……なんだと睨み上げれば、楽しそーなリュウの顔が目に映る。
 しっかりと抱き締められていて剥がしづらい腕を掴みながら格闘していると、耳もとで低い囁きが聞こえる。……こそばゆいからそんな所で喋るな!
 「……人間変わるもんだな。俺のトコに嫁いでみっか?」
 男の色香というものはよく分かった。分かったが俺も男なんだよ………
 ……男に求婚されて嬉しいはずがない。
 しかも絶対こいつら。からかっていやがるな!
 足を蹴ってリュウの腕から逃れ、危険はないかと思わず身構えてしまう。……あれ?そういえば…………
 「おいバード………?」
 なにもいってこないこの騒動の元凶に思いいたり、くるりと見回してみるが、……どこにもそれらしい影がない。
 きょろきょろとしていれば、馬鹿馬鹿しそうなサクラの声が耳に入った。
 「バードならそこの影で鼻血拭いてるよ!」
 「ばらすな!!」
 ………………………………。
 俺、本気で逃げ出した方がイイのかもしれないな…………。

 無理矢理着せられたスカートにアクセサリーを鬱陶し気に見ても、現実は変わらない。
 リュウの背に乗りながら、とにかく今までの経験上用意されているだろう結婚式の用意をぶちこわさなくてはと考える。
 膝に乗っているヒーローを撫でていると、不意に髪を引っ張られる。
 「ん?どうした、ヒーロー」
 にっこり笑いかけるとヒーローは自分の髪をもう片方の手で示す。
 不思議に思えば、……すぐに気付く事だった。
 今は髪を上げられていてヒーローと同じような髪型だ。……もっとも俺にはリボンなんかまでかかっているが。
 それが嬉しいらしいヒーローの頭を撫でて、優しい声でそれを伝える。
 「ああ、ヒーローと同じだな。似合うか?」
 「うん!パーパ一番綺麗だぞ!」
 「ガウv」
 横に陣取っていた虎も声をそろえる。……すぐにサクラの折檻が加えられていた。ばかだな……。サクラのお気に入りが他の人間一番なんていったら殴られるに決まってるだろーが。
 それを気にもとめず、女にしか見えない自分を思い起こして吐き気を覚える。
  サクラの腕がいいせいでとんでもない事になった。男顔が男っぽい女に変わるなど、誰が想像するっていうんだ?
 親父が呼び出される前に、とにかく事情をおばさんに話して解放してもらわないといけねーな………
 こんな姿見たら卒倒するぜ。
 思い至った事に深いため息が出そうになる。それをすんでのところで押しとどめた。……ヒーローの前で落ち込んでいるわけにはいかない。
 ほんと俺って親ばかだよなー……

 なんだかんだいってついてしまったバードの実家。
 幼い頃からよく行き来していたせいでお互いを熟知している。
 ………それなのに、本当にばれないですむのか甚だ疑問だ。
 まあ、ばれたらばれたでいいけど。俺は一刻も早くこの格好から逃れたい。
 素晴らしい効果音と共に、いつ見ても慣れる事のないド派手な格好をしたバードの母親があらわれる。
 ………………これ見て逃げ出す子も、絶対いるといつも思うんだけどな……。
 「可愛い私のバード。今日こそ本当のお嫁さんでしょうね~」
 おばさん、目が光っています。
 一瞬過った結婚式の光景に身震いし、俺はこっそりバードの傍から離れようとする。
 ……が、それより早くバードの腕が俺の肩を掴む。
 引きつった笑顔を向けると、ひどく真面目なバードの顔が見えた。……ヤバい、怒ってる。
 冷や汗をかいている俺の顔を見て、バードは優しく笑った。……ほんとおかしいよ
 なー、こいつ、顔はいいし貴族だし、頭もよけりゃあ英雄ときてる。
 その上面倒見もいいし、なんで嫁さんできないかね……?
 そんな事を考えていた俺の耳に、恐ろしい現実を思い出させる声が降ってきた。
 「ママ、今日は披露宴の用意は?」
 ちょっと待て!なに考えてやがるこのバカ鳥はっっ!!
 自分から言い出したとんでもない言葉に、焦って俺はバードの事を肘でつっつく。
 それに気付いたバードはにっこりと笑った。
 ……そのまま少し意地悪気に口元の笑みを変えると、耳元で低く囁く。
 「諦めろ、シンタロー。今回は助けの手、出ないぜ?」
 それはいつもお前が言われる言葉だ!!!
 なんで騙された俺が諦めなくちゃーならんのだ!
 慌てておばさんに暴露しようと開かれた俺の口が、なにかに塞がれる。
 ………ってバード!?なに考えてんだお前はっ
 男が男に公衆の面前でこんな真似してんじゃね~っ!!
 半泣きになりながらそれを受け止めはしたが、もう身体に力が入らない。
 荒い息を整える間もなくもたれ掛かったバードの声が耳に響く。
 「こーゆー訳だから、早くみんなに紹介したいと思ってんだ」
 騙されるなおばさん………
 この男、しゃべれないように自分の胸に人の顔押し付けてやがる!
 どう見たって元は残っているんだ、俺の顔は!おばさんだって気付いてるんじゃないのか!?
 けれど俺の耳に聞こえたのは無情なおばさんの一言だった。
 「まあまあ!なんておめでたいのかしら!やっとバードもシンタローちゃんを射止めたのね♪」
 ちょっと待てーい、おばさん!!
 いいのかそれで!ひとり息子が男と結婚すると言い出したら止めるのが普通だろーが!!
 もがいている俺の抵抗さえ関係ない事らしく、この親子は勝手に話を進めている。ちくしょう……、こんな動きづらい服、着るんじゃなかった!!
 「残念な事に今日は各国の王たちが忙しくて来れないそうなので、披露宴は明日にしましょう」
 …………今夜中に逃げ出す事を心に誓った俺に気付いたのか、バードの腕の力が強まる。
 なんでこう、英雄っていうのはバカな奴が多いんだか………………
 けれどそれにため息をつく暇はなかった。
 ……続くおばさんの言葉に、身体が固まった。
 「でも親御さんには挨拶しないといけないわね。今日はちょうど人王が来ているのよ。ほら、お義父様に御挨拶なさい」
 差し出された手を追っていけば巨大な人陰……
 白目を向いて鼻血たらしてる王の姿を見て激しくなった頭痛に目眩がする。
 よりにもよってこんな時にこんな所に来てんな親父!
 「……………………シーンーターローぉぉぉー………」
 低い、地の底を這いずる声。お、怒ってる、な。やっぱり…………
 引きつる笑顔を向けるとひょいと身体を摘まみ上げられる。
 体格の差が物言うよな。いっつもこうやって簡単に捕まえられるんだからよ。
 下を見てみればさり気なくバードが潰されていた………
 ……親父、容赦ねーな。
 「お前はいつから男に嫁ぐ身分に~~~~!!」
 「こっちが聞きたいわっ!」
 思いっきり手を締め付ける真似をしても、本当に苦しくはならない。
 結局はこの親は自分と同じ親ばかだ。
 本気で泣きそうなこの親に痛む胸はもちろんある。それでもこんなに体格に差のあるやつ相手じゃ、抱き締める事も出来やしないっての!
 困って……結局俺は幼い頃幾度と無くしていた機嫌の取り方を実行した。
 …………この年になってまでやりたかないし、やって欲しいと思われてるかなんてしらねーけどな。
 ちょいちょいと親父を呼んで顔を寄せるように手を動かさせる。
 顔のすぐ傍に来れたら、身体を掴んでいた手の平から逃れ、その手の上に乗った。
 見つめてくる目は自分の顔ほどもある大きさだ。
 これだけの身長の差があるんだから、顔のすぐ傍にいる俺を見るのは辛いだろうに、しっかりと行動を見守っている。
 それに苦笑し、俺は親父の頬に唇を寄せた。
 触れる微かな感触に目を潤ませている。………嬉しいもんなのか、やっぱり。
 でもまだどこか憮然としている視線に悩むと……気付かなければよかったと後悔する。
 この男、見ていたな。さっきの俺とバードのキスシーン…………
 ほんと俺、男でよかった。……女だったらヒーローつれていった時、きっと親父の事だから世界滅ぼしかねねーぞ…………
 頭痛の種が親父だなんて情けなさ過ぎる。呆れたため息を吐きながら、俺はしかたなしに場所を移動して、改めてその唇に触れた。
 ………なんで俺がこの人の機嫌をとっているんだろう。
 しばらく反応が返ってこないと思ったら、唐突にガシッと身体を掴まれる。
 またかと嫌な顔をすれば、泣き濡れた親父の顔がアップで映る。
 な、なんだよ一体。上体を逸らして逃げようとしても、捕まえられていては意味がない。
 「シンちゃん!お前をバードの嫁にするくらいなら、私の嫁にする!!」
 呼び方が昔に戻ってるぞ………
 もうつっこめる所はそれくらいで、ワナワナと俺は身体を震わせた。
 「……いい加減にしろ、この大馬鹿者どもっ!!!!」
 自由人の証である翼をだし、俺は力一杯雷雲を呼ぶと………バカな男たちにむけて落とした。

 ―――――――ズドーンッッッ!!!!!!

 物凄い大音響とともに辺りの見晴しがよくなった。
 ちょっとやり過ぎたかと思いながら瓦礫の下に埋もれている男たちを見る。
 よし、動かないな。この隙に帰ろう。
 ヒーローには当たらないように気をつけたし、近くにタイガーがいたから大丈夫だろう。
 こんな時くらい、雷虎としての能力を発揮してもらわなくちゃーな。
 ガラガラと音を響かせながら煤に汚れたタイガーの顔があらわれる。
 その腕に抱かれたヒーローは傷どころか汚れさえついていない。
 それに満足そうに笑って俺は手を伸ばす。
 ヒーローは俺の腕のなかに納まると羽をしまって落ち着いたように笑いかけた。
 「パーパ凄いぞー。みんなやっつけちゃった!」
 「……ちょっとやり過ぎ………」
 呆れたようなタイガーの声に苦笑する。まあ確かにやり過ぎかもしれないが、あいつらも十分やり過ぎだ。これっくらいでちょうどいいと思うぜ?
 「あのな、そんな事いったって俺には手のかかる子供が二人もいんだから、こんな遊びに付き合ってられないの!」
 「二人………?」
 ヒーローを見ながら不思議そうにいうタイガーに俺は面白そうに笑いかける。
 「そ。ヒーローと、お前っていう家族だよ」
 帰る場所のない虎を預かってから大分たつのだ。こいつとヒーローが一人立ち出来るようになるまでとてもじゃないが遊んでいられない。
 そう笑っていえば、虎はやっぱり子供のような笑顔で頷いたのだ。








ふふふふふふふふふふふふ………………
出来てしまいました、滅茶苦茶わけの判らない、 なにいいたいのか私にも理解出来ないギャグが!
本気で苦手みたいです、ギャグって(涙)
しかも結局シンタローの相手、誰に落ち着くんだろう……… もう誰でもOKだろっていうのが最終結論(オイ)
話のなかではシンタローの女装姿、敢えて書いていません。
シンタロー自分の顔を特にイイとも悪いとも認識していないと思うので、 シンタローの一人称で書いてたら見目に関する事項無くなりました。
気が向いたらTOPにでも飾ろうかしら(笑) ………ヤだな、そんなのがお迎えするサイト…………………。

それではキリリク1300HIT、人王×パーパギャグ風味一丁!
でーんとどんぶりに入れてお届けします。