どうにかこうにか終ってくれたハチャメチャな偽装結婚式。……毎度のことすぎて何も感想はないが………
  やっと家に帰ってこれた俺は軽く息を吐き出して伸びをする。
 変なもの着ていたせいで肩が凝ってやがる………。首を回しながら部屋の奥に進む俺の耳にアラシの声が聞こえた。
 「なあシンタロー……この家なんで誰もいないんだ?」
 「あ? ……ああ、ヒーローたちはいまぷるるちゃんの介抱してるから。多分そろそろ戻ってくるだろ」
 会場自体がああなった以上、事態は収集するわけもないし。あのまま流れ解散だろう。だとすれば騒がしい現場になんか残さずにキリーがプルルちゃんを抱えて連れ帰るだろうし、そうしたらすぐヒーローたちも帰ってくるだろう。
 そう説明しながら振り返った俺のすぐ真後ろにアラシの顔。……なんでこうこいつらは異常接近を唐突にしてくるんだ?
 憮然とした顔で見返していれば、ニッと笑いかけられる。あ、ヤな予感。こいつのこういう顔見て俺に何の被害もなかった事ってないよな………
 無意識に身体がアラシから離れようとする。……が、それを許す程甘くもないよな。
 想像通りにとりあえずアラシの腕が俺の背をしっかり抱き締めてくる。……またこのパターンかい。
 すっかり慣れてしまった事態に表情も変えないで俺はゆっくり腕をアラシの背に伸ばす。
 そして……………ドカッとアラシの後頭部を殴りつける。
 「…………〜ッ!!!」
 「馬鹿もの」
 呆れたように言い切って俺は蹲っているアラシをしり目に奥の台所にいった。いい加減喉も乾いたし飲み物でも入れるか。
 あ、アラシなに飲むかな?まさか昔みたいにジュース飲むわけないし……コーヒーは俺が好きじゃないしな………
 まあ茶でも入れればいいだろう。文句もいうように思えないし………
 とりあえず2つ湯飲みに入れた茶を入れて戻ってくると………なんだこの展開は。
 「アラシ………」
 「ああ、シンちゃん!どうした?」
 「………………………なんでお前がヒーローをだっこしてるんだ?」
 そう。何故かもう帰ってきているヒーローはアラシの膝の上にのってお菓子なんぞ頬張っていたりしている………
 なにをどうしたらそういう光景を見る事になるんだ………?
 「ああ、これね。餌付け」
 おい!!! なんだその真面目きった顔ではっきりきっぱり言い切った答えは!
 なんでうちのヒーローをお前が餌付けするんじゃ! つーかなに人の息子に堂々と餌付けしてるなんぞとのたまうか!!
 いいたい事は山ほどあるが……ヒーロー自身が嬉しそうにお菓子を食べてるからでかかった言葉なんぞ全部飲み込んでしまう。……ヒーロー……………
 俺の視線に気づいたヒーローはこちらを見て、パタパタと手に持っているお菓子をふりつつ御機嫌に話し掛ける。
 「パーパ、いま帰ったぞ!ヒーローアラシからお菓子貰って食べてるんだーv」
 「…………お帰り、ヒーロー………。あのな、そういう危ないおじさんに近付いちゃダメだぞ?」
 こっちに戻ってくるように手で示せば何の未練もなくヒーローは羽根を出して俺の方に飛んでくる。……よかった、素直な子で………
 ほっとした俺の耳にはつまらなそうなアラシの声が聞こえた。
 「……ちっ。やっぱり馬から手なずけるなんて間怠っこしいか………」
 ………………………聞かなかった事という事で。
 はー、やれやれ。なんかもう……今日は疲れる事しか全くなかった気がしてきたぜ。
 ずっしり重い身体を休めたくなった俺はヒーローが戻ってきて嬉しそうに遊んでいるタイガーのシッポを引っ張る。
 「ガウ?」
 「ちょっと背中貸してくれ」
 返事も待たないで俺は即タイガーの背中に横になる。アラシが何かしでかそうとしてもまあ……これならタイガーが知らせてくれるし。大丈夫だろう。
 少し安心した俺はすぐに眠ってしまって……その間になにがあったかなんて知る由もないけど………

 ………………寝ちまいやがった。信じらんねぇ! 無防備もいいとこだぞ!?そんなに俺に襲えってのか!?!
 ドキドキしながらちらりとシンタローを見てみる。………こいつ本当に俺と同い年か?
 よくもまあ……ここまで純粋培養で生きれたな。まあそれに一役かってる俺がいう事でもないけどよ。
 さて、この場合問題なのは虎とガキだよな。もう一匹いる女のガキは母親の所にいってるっていっていたし……この二人どうにかすりゃあ後は俺の自由!
 間怠っこしい真似は面倒だし、さっさとどっかに捨ててくるか。
 そう考え至った俺の耳にお邪魔虫の来る足音が聞こえる。ちっ! もう復活しやがったか!!
 「シンタロー!!無事か!?」
 「うるせえよ、鳥。シンちゃんが起きちまうだろ?」
 「ああ!?なんでテメーがまだいやが………」
 色男な鳥人が俺を睨みながら苦々しく言いつつ……視線が泳ぐ。
 あー……まあわからんでもないがな。ドアから俺を見れば、自然俺が進むつもりだったシンちゃんのいる方向が見えて。……なんというか愛らしさ爆発!な姿が見えるわけだ。
 本人にいった場合燃やされるから絶対に内緒だがな。
 「なんだ、鳥。顔が紅いなぁ?なんか如何わしい事でも想像したか?」
 「それはテメーの存在自体のことだろうが! この色ボケ海人!」
 まあ否定はせんが……こいつも人のこといえんだろうよ。余裕綽々に鼻で笑ってやれば悔しそうに歯を噛んでる。……ガキだねぇ〜。
 ちょっとばっかりからかってみるつもりだったが……いまは邪魔だからさっさと追い返すか。手荒になっても……一応ナンバーワンだしな?
 死んだら死んだでそいつが悪いってことで。………物騒な事は全部シンちゃんには見えない所で。これ最低限のお約束v
 そんな俺の考えを粉砕すべく……余計なもんがどんどん押し寄せてきやがったけどな………
 「おーい、バード! おっさんいたのか?」
 どこか幼い声に女みたいな美麗な顔。……なんだその豪華極まりない黒いドレスは。さっきの会場にこんなのいたか?
 「あ、サクラお色直しーv 鳥王と同じだな!」
 「あんな悪趣味と同じにしないでくれる? サクラの方がちゃーんと男の興奮度あげられるように計算してんだから!」
 ………別に鳥王は男誑かすために着替えてるわけじゃないと思うがな。まあ人王狙ってるし、似たようなもんか。
 続いて入ってきたのは…………こりゃあ燃えんゴミの類いかね?
 なんだって俺並みにゴツイ男(しかも男臭さプンプンな)のスリット入った足なんぞ拝まなくてはいかんかな………。ピッチピッチのチャイナドレスはしっかり肉体の線通りに浮き出てるし……この格好をあの会場からここまでしてきたってことは……また七世界戦争起こされても仕方ないくらいの公害だな。
 「なんだー、シンタローの奴寝てんじゃねぇか。これからみんなで酒飲もうってのによ」
  「リュウー、パーパお酒飲めないぞー」
 「いいんだよ、おもちゃがいた方が宴会は盛り上がるもんだ」
 お、結構正しい見解持ってんじゃねぇか、化け物! クソ真面目なやつは宴会ではいいおもちゃだよな♪ 
 機嫌良くそれに同意しようとした瞬間……
 ――――――ドガンッ!!
 あ、家のドアが壊れた…………
 「な、なんだ!?」
 さすがに寝ていられなかったシンちゃんが起きてきた。……なんだぁ、一体………
 よーく見てみれば……ありゃ、クラーケン様じゃねぇか。
 …………………が、なんつう格好しているかね。思わず笑いそうになるのを堪えた俺はすごいだろう!
 なにって、あの七世界戦争起こしたような魔人が、なに純白のドレス着てんだよ!しかも下手な女よりよっぽど似合ってるときたもんだ。
 慌てて対抗心燃やした花人は化粧直ししてるし。……おお、虎がクラーケン様見るのも許さないとこ見ると負けたと思ってんのかね?
 「ほぅー……人間化けるもんだね。あんな美人なら嫁に欲しいもんだが」
 「ダメでちゅよ、リュウ兄ちゃん。そうしたら竜王ちゃまが舅でちゅ」
 「……あ、そうか。確かにそれは面倒だもんなー」
 こっちの龍人は龍人で好き勝手いってるしな。シンちゃんこいつらといたらそのうち胃に穴あけるだろうなー………。まあそうなったら俺の家で付きっきりに看病してやるけどなv
 って、そんな事は置いておくとして。……なんでこの人がこんな格好してるかね?
 「く、クラーケン……それ、さっき龍王様が着ろっていってた………」
 顔を引きつらせながら心底同情している唯一の人間が声をかけてもクラーケン様は顔を俯けたまま。
  ま、当然だな。プライド高い人だし……。だったらこんなとこ来なけりゃいいのに。
 ………で、固まったままの空気を読めなかった馬鹿なガキの一言で……まあ見事に事態悪化しましたよ、と…………
 「クラーケン美人ーv サクラみたいだぞーv」
 ほーら、ブチって音が部屋中に響いたぜー。シンちゃん……甘やかしてっからこういう雰囲気読めない馬鹿に育つんだぜ?
 さすがに事態の悪化を予想出来てるシンちゃんが慌ててヒーローを抱えている。………ムカ。
 まっ先になんでそいつ庇うかな。……まあ解りきってるけど、なんか腹立つムカつく。
 「シンタロー!! 貴様が原因で俺までこんな格好をさせられたんだっ!」
 「ちょっと待て! それは完璧に責任転嫁ってヤツだろ!?」
 「五月蝿い! 黙れ、殺すッッ!!!」
 あー……キレてんなークラーケン様。でも俺としてはシンちゃん苛める奴は俺以外に欲しくないんだわ。
 クラーケン様のアイスボンバーが華麗に舞っている中、俺はシンちゃんの首根っこひっ捕まえて窓から外に出る。………なんか妙に重いな……
 外に出て改めてみてみれば……オイオイオイ、シンちゃん…………………
 しっかりこいつ、ヒーローと虎を抱えてるし……………
 「シンちゃん! ああいう時に他の人間気にしてるなっていってるだろ!?」
 「お前も俺を気にした癖にいうんじゃない!」
 「俺はいいの! でもシンちゃんはダメ!」
 我が侭承知の上で言い切る俺に呆れたようにシンタローは息を吐く。……悪かったな、どうせガキみたいな事いってるよ。
 「ったく、お前は本当に……仕方ねぇ奴」
 どっかおかしそうに囁いたシンタローの顔は……ありゃ?思ったよりも随分やわらかい…………
 見愡れていれば、俺の腕から離れて自分の羽根でシンタローは飛ぶ。……ちっ、このまま攫っとこうかと思ったのに………
 そんな考えが浮かんでいたのか、シンタローが軽く俺の頭を殴る。……勘のいい奴。
 「ほら、そんなぶーたれてねーで、いくぞ?」
 「……あ? 一体どこに?」
 「親父ん所。今日泊まりにいく約束してんだよ。いくだろ?」
 「…………………行く」
 なんの含みもなくってのが気に入らないけど!
 でもまあ……こんないい天気の中二人で(ガキと虎は眼中になし!)散歩ってのも……いいもんだよなv
 さーて、途中で本当に二人っきりになるためにも、お邪魔虫の排除を考えねーとなv







キリリク11500HIT、『逃避行?』の続きです。
イヤー……訳解んないですね☆
今回は途中でシンタローが寝てしまったので語り手いなくなってしまった事にその場に来てから気づき(阿呆)急遽アラシに語り手タッチv
………結構書き易かった事にショック(笑)
シンタローの見方が書けて結構面白いなーとかv

この小説はキリリクを下さったアヤコ様に捧げます。
とりあえず頂いたリクは全て書き込みました! こんな感じになってしまいましたけど……いかがでしょうか。