なんでこの状況が出来上がったんだろう。
 ………眼前の二人を見ながら溜息とともに俺はそう思う。
 というか。なんで俺は自分の親と親友とが対峙しているシーンを見なければいけないんだ? しかも思いっきり険悪に………
 お互い笑っちゃいるけど……怖いんですが。
 まあそれも気になるが、なによりの疑問がもう1つ。
 「パーパ……なんでジージ小さいんだろ?」
 俺の肩に乗っていたヒーローが俺の疑問をそのまま口にしてくれた。
 ……そう。何故か親父のサイズが普通に戻っていた。
 俺と同じくらいの身長。普通の自由人の体格。
 あんた昨日までは確かに山みたいに馬鹿でかかったでしょうが………?
 まったく持ってわけ判らない。……その上なんでアラシといきなり向き合ったまま固まっているかねぇ………
 しかしこれ以上このままここにいても時間の無駄。俺はそう判断して頭によじ登ってきたヒーローに声をかける。
 「ヒーロー……」
 「なんだ、パーパ」
 明るい可愛い子どもの声。……はぁ、今日は久し振りに親子水入らずと思っていたんだけどな………。
 いまからそれを強行突破しようかなーとか思っちゃいるが。
 「このままじゃ出掛けられないから、パーパと二人で行くか?ピクニック」
 「ジージいいのか?」
 純粋な目で聞かれるが……お互いよーく分かってる。
 このまま親父待っていたら日が暮れるぜ。放っておいても親父相手ならアラシだってそうそう悪さできんだろ。
 そう決めて俺は明るい笑顔でヒーローに答える。
 ……なにより、俺は早くこの場を離れたい。すっごく嫌な予感するんだよ。……まあアラシが来ている時点で嫌な予感はするものなんだが。
 「大丈夫。アラシと話が済んだらすぐ来るさ。ほら、行こう」
 俺があの馬鹿共に捕まる前に!!
 祈りさえ込めて急いで飛ぼうと広げた俺の羽を……掴む腕の気配。
 振り返りたくないけれど無視も出来ない。
 俺は青ざめた顔のままゆっくりと振り返る。そこには………………
 「シンタロー、テメェなに勝手に行こうとしてんだ! まだ話はついちゃいねぇ!」
 お前と話していた記憶はまったくないんですが。
 「親を置いていく奴があるか!!」
 そう思うならさっさとこいよ…………
 なにはともあれしっかり両羽が二人の手で押さえられていては飛べる訳がない。
 ……………………………………………………………捕まった。


 ふかーい溜息を吐いているとヒーローが慰めるように頭を撫でてくれる。ウウ……こんな小さなヒーローだって俺のこと労れるのになんであんたらは出来ないんだよ!!
 物凄く情けない気持ちのまま、また聞きたくもない会話が降ってくる。
 …………ヒーローの耳を塞ぎたい…………………
 「だいたいあんた、なんで今さらそのサイズになってるんだ? あ、もう世代交代?」
 それはつまり引退しろといいたいのか、アラシ。誰が王になるんだよ。俺はヤダぞ。
 「ふん、貴様ごときにいわれる覚えはないわい。ガマ仙人の有り難いお察しのおかげで今日はこの姿なんじゃ。時間もない、さっさと帰らんか?」
 あー、やっぱりガマが関係してんのか。……って、たかがピクニック行くのにわざわざ天界行って小さくしてもらってきたのかあんた。……馬鹿かい。
 「けっ、今日はシンちゃんは俺とデートなの。隠居じじいのあんたがさっさと帰れば?」
 ……………………………アラシ。
 俺は男とデートする趣味は持ち合わせていないんだが………?
 まったく約束した記憶もないのになんでここまで自信一杯に言えるんだかねぇこいつは…………
 呆れた俺を見ている視線に気付き俺は視線をそちらに向ける。んだよ親父?
 ……って親父、なに俺のこと睨んでるんだよ! そんなウソ本気にしてんじゃねぇ!!!
 「シンちゃん!! 今日は久し振りに父さんと一緒にピクニック行こうっていっていたのに……! お前から誘ってくれるなんて6つの頃以来なのに…………!!」
 慌てて俺が言い訳しようとするより早く、親父がなにか喚きはじめる。
 …………悪かったよ、どっか行きたいなんていわないガキで。そんなに寂しかったんかい。全然知らなかったけど………
 だからってなにもハンカチまで出してさめざめと泣かんでもいいだろ?
 元英雄の現王がさ…………………
 もんのすごく情けないというかなんというか………これと血が繋がっているんだよなー俺………………
 ちょっと遠く見たくなっちまったぜ。
 っていうよりもさ……男のアラシがぼけた発言した事には何の疑問もないのかよ親父……………
 そんな冷静な判断下していた俺の耳に今度はアラシの楽しそうな声が響く。……早く帰んないかな、こいつ…。どんどんコトがややこしくなる気がするんですけど……………
 「6つ〜!? 何十年前の話だよ。俺なんて戦争始まる直前まで逢い引きしてたぜv」
 ………だから何故そういう単語が出てくるんだ?
 いや、もうこの際どうでもいいか。
 しかし………俺の記憶が間違えていなければ……確かいっつも俺は修行あるからと断っているにも関わらず朝に迎えに来て無理矢理連れ回されていた気がするんだが………
 バードが泊まりに来ていた日なんて喧嘩始まるし…………
 思い出した幼少の頃の記憶に重い溜息が落ちる。……なんでこんなにしょうもない思い出が多いんだよ俺…………
 もうどうでもいいと聞き流している俺に可愛い息子の声がちょこんとはいってきた。
 俺の膝の上に坐っているので少し視線を落とせばヒーローの顔がいっぱいに映った。
 「パーパ」
 「……ん? なんだヒーロー」
 不思議そうに見上げる目には疑問がいっぱい乗っている。……どれが疑問かなんて聞けないが。
 なにもかも全部が俺にも疑問だよ……………
 そんな俺の思考とは別に、ヒーローは無邪気にあっさり尋ねてきた。
 「逢い引きって……パーパとアラシは結婚するのか?」
 ……………………………………………………………………。
 ヒーロー……その無邪気な笑みで一体なに考えていたんだ?
 「するかー!!!!!」
 思わず泣きながら絶叫してしまった……………
 それを目敏く見ていたらしいアラシがニヤリと笑ってこちらに声を掛けてきた。…………来るな厄病神。
 「ほう、いい勘してるじゃねぇか、ヒーローだっけか?」
 「アラシ!! 勝手な事いうな! ヒーローが本気にするだろうがッ!」
 ついでに人の顎上に向けるのもやめて欲しいが……ヒーローを押さえている身では振り払えない。
 ……なんとなくこの手を離したらヒーローが暴れそうな気がするのはなんでだろう……………
 どうやってこの馬鹿を退かそうと悩んでいると……突然アラシが横に吹っ飛ぶ。
 な、なんだぁ!?
 「人の息子に軽々しく触るんじゃないッ!」
 いきり立った親父の声が響く。……いつの間に接近したんだ。さすがは元英雄!
 ナイスだ親父! 蹴り飛ばされたアラシもまあ……すぐ復活するだろうし同情の余地はなしという事で済ませとこう。
 やっと話も終ったと思て俺は立ち上がって抱えていたヒーローに声を掛けようとする。
 ……………終ったと思ったんだ。この馬鹿親父が何もいわなければ終ってたんだっ!!
 「大体! シンちゃんはわしの嫁になるといっておったんじゃ! 誰がお前なんぞにやるかっ!」
 「なんじゃそりゃ!!?」
 思わず声出して突っ込んじまうほどのボケをなに真剣な顔でいってんだこのボケッ!!
 「なんでジージがパーパと結婚するんだ?」
 「ん? ああ、ヒーローは知らんのう」
 …………当事者の俺も知らないんだよ。
 固まっている俺を無視して親父は話をすすめる。……頼むからほほ染めて思い出話するな。いい歳したおっさんが……………
 「こやつはなー、2つの頃にわしにいったのだ。パパと結婚するvとな」
 「物心ついたばっかのガキの言葉本気にしてンじゃねぇぇぇぇ!!!!!」
 思わず絶叫した俺に罪はないだろう。
 なんでこう俺の回りは馬鹿ばっかなんだ…………………
 溜息をまた吐きそうな俺の肩にぬっと誰かの手がかかる。
 ぎゃっ!?………っていまこの場にいるのはあとはアラシしかいないんだから驚く必要もないか。
 思ったより復活早かったなー。……ってその不敵な笑みはなんですか?
 「2つの頃だ〜? 笑わせるな、人王!」
 ……他国の王にそこまで偉そうな態度とるなよ。一応国交問題になるはずなんだからな。まあ有り得そうにないけど。
 「俺は7つの時にずっと一緒にいようなっていわれてるぜ! だから俺の嫁!」
 「………一緒に英雄になってって俺はいったはずだが? それ以前に俺は男なんだよ………」
 冷静に突っ込む俺の言葉からはこの男耳塞ぎやがった……なんて身勝手な。
 呆れ倒れの前でまーた二人は食って掛かりはじめる。
 ………楽しいか、こんなゴツイ男のコト取り合って。しかも刻々と時間は過ぎていってるんだよなー………。ピクニックいけるかな…………?
 もうすでに二人の言い合いに飽きた俺はまた座り込んでヒーローを膝の上にのせる。どうせ逃げようとしたらまた二人に捕まるんだろうに、大人しくまってるしかないのかね………
 ギャンギャンうるさいBGMに慣れるとはないなーとか思うが………って今度は一体いつに遡って言い合い始めてんだよ……。俺も記憶にねぇよそいつら…………
  ふかーい溜息と同時に、ぽんとヒーローが手を叩く。
 …………?どうしたんだ?
 嬉しそうな顔に思わず俺の顔も緩む。そんな俺に爆弾が投下された……………
 「ジージが2つでアラシが7つだろ? ヒーローがパーパにいわれたのは28だから、パーパはヒーローのお嫁さんだ!」
 「………ヒーロー………………………?」
 呆気にとられた俺の口を塞いでくるし…………。いや、昔によくやってはいたが、それは親子のふれあいであって!?
 混乱している俺の耳に親父とアラシの喚き声が聞こえる。
 「ヒーロー! 他のもんはいいが、シンちゃんはダメじゃ!」
 息子を嫁にしようと本気で考えるな親父ッッ!!
 「なにぬかしてんだくそガキ!そりゃあ俺ンだっ!」
 男を娶ろうとするなっ! 嫌がらせでも質悪いぞッッッ!
 「パーパの命はヒーローのっていわれたからいいんだ!」
 そういう意味じゃないんだヒーロー!!っていうかお前もう嫁さんいるだろうが!
 あーもー三人して人の身体引っ張るな!?
 わけ判らなくなってきた俺はプチッときれる。
 ………もういい。このボケ共…………………………!!
 怒気がもれ始めた事に気付いた親父とアラシがビクリと固まる。
 元はといえばこの二人が大人気ないせいでこうなっているんだよ。……さっさとどっかにふっとばしゃよかったんだっ
 坐った目のまま俺は羽を繰り出して風を呼ぶ。
 「風よ!自由人が命ずるっわが翼に集いてこのボケを吹き飛ばせっ!!」
 大きな耳鳴りに似た騒音とともに風が男二人をなぎ払う。
 ………はぁ……やっと静かになった。
 「さて、ようやくピクニックいけるな。二人じゃ弁当あまっちまうし、タイガーとバード誘っていくか?」
 にっこり俺が笑って声をかければ、ヒーローも満面の笑みで返す。
 「うん!あとアマゾネスマーマのトコにいってミイたちも呼ぼう!」
 「はいはい」
 楽しそうな子どもの顔にほっと息を吐いて俺たちは羽を操り空をかける。
 やっと今日の目的が遂行出来るなーとかちょっと安心。

 ……………さっきのヒーローの言葉……冗談と思っていいんだよな?








キリリク16000HIT、アラシVS人王×パーパです。
………思い出話だったのかしら(遠い目)
アラシと人王が喧嘩するとなると……ちょっと話するのも大変なんで人王に小さくなってきてもらいましたv
そんなにパーパとヒーローとピクニックいきたかったんだねv(空笑い)
そして最後の最後で……さりげにヒーローが怖い。
無邪気に一番怖い子だなーとか思ってしまいました…………

この小説はキリリクを下さった柚吏様に捧げますv
……遅くなって申し訳ないです。しかも久し振りに書いたせいでなかなか勘戻らなくて……(汗)