初めてみた光。
初めて認めた魂。
ただ憧れた。そうなりたいと思った。
伸ばした手を笑って受け止め、高みまで導いてくれる男。
その男の背を追っていた。
……生きるも死ぬも一緒だと、勝手に思いながら…………
凍れる焔
空を見上げている子供を見つめる。
……その視線は自分の認めた男に酷似していた。
少年の視線に揺らめきが走る。瞬間漏れた気配を感じとったのか、子供は空を見つめていた瞳で少年を捕らえた。
それは子供の見つめていた空を抜き取ったように底知れぬ純粋さを現していた。
眩さに、少年は眼を細めて笑いかける。
そんな少年に不審そうな声が掛けられた。
「……貴様は、なんでそう唐突にくるんだ?」
「なんだ、不都合でもあるのか?」
どこか怒ったような声に少年は楽しそうに返した。
……子供の目許の灯る朱に気づかないほど鈍感ではない。
言葉が照れによるものだと判らないほど自信がないわけでもない。
幼い子供は不器用に少年への思いを現していた。
「俺が針の塔に行くんだ。貴様がそう出てきたら張り合いがない」
見抜かれている事で気分を害したのか、子供は少しむくれた声でそういった。
逸らされた視線は幼気で。
少年は子供の頬に優しく手をかけた。
……それにみじろきながら子供は軽く少年を睨んだ。
それを受け流し、少年は子供に尋ねる。
「爆……お前は一体なにを見ていたんだ?」
どこか遠く、自分の知らないなにかを見つめていた瞳。
自分の届かない所に思いを馳せる子供が歯痒くて思わず囁いてしまった言葉に、子供の目は大きく見開かれた。
……気づかれるとは思っていなかった。
判るものがいるとは思わなかった…………
泣き笑いの顔を一瞬零し、爆は少年の胸元に顔を埋めた。
………少年の身体が硬直する。
「別に……院で育ててくれた人を思い出していただけだ」
優しく聡明な育ての母。……もうこの世に存在しない人。
この空へと溶け込んだ懐かしい人を子供は思っていたのだ。
その声に含まれる切なさに少年は眉を顰めた。
……自分には判らない。
家族にどれほどの価値があるのか。
守れない事にこの身を切り裂かれる。ただそれだけだった。
唯一生き延びた姉とは決別した。……綺麗言だけを囁いて、最も大切な人を手放した愚かな女。
自分と同じく男を必要としていた癖に。愛していた癖に。
姉は縋らなかった。共に針の塔にある事を望まなかった。
馬鹿で愚かで……どうしようもない。
胸の内を駆けるいら立ちを紛らわせるように少年は子供に口吻けた。
深く強い、求めるだけのそれに子供の手が反抗する。
「…………?」
それに不思議そうな目を向け、少年は唇を離した。
息苦しかったのか、子供の目許に涙がたまっている。
……それとも、拒絶故なのか。
不意に沸いた考えに身震いし、少年は肩で息をしている子供に再び口吻けようと顔を寄せた。
「炎……!やめろ…!!」
はっきり聞き取れる拒否。
……ぞくりと背筋を駆ける悪寒。
腕を廻した身体は逃げるように手を突っぱねている。……びくりと少年の身体が震える。
それに気づいて爆は炎を見上げた。
……頬に落ちてきた雫。
少年の瞳から降る雨に子供は呆気にとられた。
「なにをしているんだ、まったく………」
呆れたように爆はため息をついた。
なにもかも、訳が判らない。自分を見ない目で突然無理矢理口吻けたり、それを拒否すれば子供のように泣いたり。
ひどく感情が不安定だ。一体なにがあったというのか……
それでも少年は自分に相談などしない。
……それだけは切ないけれどけして変わらない自分達の距離。……そしてプライドだ。
静かに爆は炎を抱き締めた。
なにも恐れるなと囁くように………
その腕に抱かれ、炎はいまも眠る姫を思う。
―――――愚かで…大嫌いな女。………それでもこの血を分けた人。
自分はもう、昔ほど純粋に人を思えない。
ただ、この子供だけを必要としている。
だからもう、いらない。
……これは決別の涙。
この子供を手に入れるには邪魔となるのだ。だからもう……
この手に残るのは、たった一つ。
――――愛しい幼い子供の魂だけでいい。
昏く笑う心を噛み殺しながら、炎は爆を抱き締めた。
…………………コノ手ヲ離シハシナイ……
如何なものでしょうか、キリリク2300HIT炎×爆ですv
ちょっとダークな炎に出てきて頂きました。
私は物凄く姉大好き人間です。ので、姉を手にかけられた炎はどうなんだろうと思いました。
……結構、好きだったんじゃないかな〜とか。
同じ人に惹かれて、同じ夢を見て。同じように生きるはずだった人です。
でも自分達の星を無くしてから、全てが変わってしまって、炎は大切だったもの全部なくしてしまったから。
また失うくらいなら、自分から捨てるって、思ったかなーとか。
でもやっぱり姉は大切です。殺そうとしないでね……
実は今回のキリリク、ひどい真似をしてしまいました。
なんとこのリク、リストに載っていなかったんです!
……完璧な私の手落ちです。申し訳ない事をしてしまいました。
今後こうした事を起こさないように注意していきます。
本当にすいませんでした。
この小説はキリリクを下さった藤 恵様に捧げますv