未知のなにかを学ぶことを恐れない人間はいるのだろうか………?

変わらない日常が好きだった。

厳しくとも誇れるほどに強い父の背。
優しく支えてくれる使用人たち。

何一つ亡くならずに存在してくれればそれだけでよかったのだ。

名誉ある仕事などなくて構わない。
…………GCの憧れる伝説の人にも興味はない。
ただ穏やかにいまのままで。
ただそれだけしか望んでいなかったのに。

零れ落ちたその命を求めて…いまだ立ち上がれない。

幼さを理由に弱さに甘える。
優しさと脆弱さを摺り替えて、ただ涙を流す。

未知を求めることを畏れて…………………………

 

 

知るという事

 

 月が冴え渡る。……幼い頃は怖かった闇夜。
 厳しい父をそれでも愛していたから離れ離れになる夜は怖かった。
 ……一人は寂しかった。
 見上げた先の月は儚くて、父の柩を収めたあの日、夢中で駆けていった事を思い出す。
 なにを求める事も出来なくて。……一緒にいて欲しくて。
 抱き締められる事もなく消えたあの逞しい腕や大きな背中が恋しくて。
 寄り添った墓石はひどく冷たかった。
 ぬくもりを与えたならあたたまるだろうかと愚かしく抱き締めても返ってくるはずのない抱擁。
 …………何故、失ってから自分は抱き着く事を願いのだろうか。
 もう拒まれる事はないから……抱き締める。恐れる事なく近付ける。
 冷たく厳然とそこにある墓石は悲しいほど自分を受け入れはしない。
 拒まないのは気づかないから。……自分がここにいる事さえ分厚い墓石を通してでは父に伝わる事がない。
 寂しさを紛らわすように子供は空を見上げる。
 やわらかな月光が頬を滑り……淡い影を作る。
 その影を踏み締め、近付いた気配に子供は振り返った。
 「あ……爆さん。どうしたんですか?」
 月の範囲内にいない彼をそれでも見間違う筈がない。あまりにはっきりとしたその気配。隠す事なく近付いたのは自分に存在を知らしめる為。
 ちゃんと気づいた子供に微かな笑みを浮かべて爆は同じ窓まで近付き月を見上げる。
 「………どうも気になる事があってな」
 小さなその囁きにびくりと子供の身体が跳ねる。
 ………いまなにか気になる事があるとしたらそれはこの城で時折響くその唸り声。
 けれどその正体をまだ自分は口に出来ない。ほんの少しの自信さえ持っていない子供はやっと手に入れたGCたちを手放す事を恐れている。
 卑怯だという事を知っている。それでもどうする事もできないから……言い訳をする。
 自分は弱いから。………だから人の手が欲しいのだと…………………
 月を見上げるその横顔を見つめ、震えた身体がオドオドと言葉を紡ぐ。
 なにをいったなら話を逸らせるのかわからなくて……子供は思い付いた事をとにかく口にしていった。
 「あ…あの………お二人はどちらに…………」
 「あいつらは日没とともに寝る。とっくに就寝時間だ」
 「そ、そうですか、健康的ですね………。えっと…あの………」
 辿々しい子供の言葉に即刻揺るぎない答えが返ってくる。
 どこかそれは会話を途切らせるように冷たく冴える。
 気づいてもどうする事も出来なくて、かけられる言葉から逃げるように子供は会話を探す。
 挙動不審といってもいいほど辺りを見回したり俯いたり……それでも囁いた言葉は全て短く切り捨てられてしまった。
 戸惑うように子供は目の前の彼を見上げた。
 目をあわせる事が怖くて……仰ぎ見た先に浮かぶ月を瞳に写す。
 月明かりに照らされた頬が青白く瞬き、射すくめるほどに強い視線が子供に注がれた。それを感じてどうしようもなく子供は俯いてしまう。
 何故……彼らを選んでしまったのだろうか。
 ……強くなりたくて。一人前のGCにならなくてはいけなくて。
 誰でもいいから力を貸し手欲しかったのに……3人はあまりにも厳しく自分を甘やかしてはくれない。
 俯いたその頭を眺めながら爆は小さく息を吐くと深い声を落とす。
 揺るがないそれは月より舞い落ちた音色。
 ……耳を塞ぐ事も出来ない潔さ。
 「お前は…すぐに逃げるな。新しい事に向き合う気がないだろう?」
 断言された言葉は……あまりにも事実で。
 震えた身体が彼にその答えを如実に語っている事が子供にもよくわかった。
 知らない事を知る事は怖い。
 ………知る事で壊れる事が……怖い。傷つく事が怖い。
 知らないというだけでそれは恐怖の対象。立ち向かおうという考えさえなくただ黙々と同じ事を繰り返す事が楽だった。
 それを周りは許してくれたから…………
 「だ…だって………僕はなんにもできないから…………」
 掠れた声が息苦しそうに紡がれる。
 それは押し殺され続けた子供の感情。……吐き出す事を恐れ厭い続けた声。
 逃げている事を認める声音は哀れなほど幼く小さい。
 けれど……………
 「学ぶ時、一体なにが必要だと思っているんだ?」
 甘やかす必要がどこにあるのだろうか……?
 子供は強くなりたいといった。GCになりたいのだと。
 ………ならなくてはいけない、そう叫んでいる事も知ってはいるけれど……………
 囁く声は玲瓏で、きっと子供を傷つける。
 それを知ってなお囁く価値があるかどうかまだ見極める事は出来ない。その上で突き付けるのは酷なのかも知れないけれど…………
 それでも思うのだ。
 その丸めた背を伸ばし、前を見たならどれほどのGCとなれるのかと………………
 躊躇うような素振りを見せながら…それでも子供は顔をあげた。
 視線の先に広がる月。……それに染めあげられた彼は静かに言葉を奏でる。
 「学ぶ意志と己を研摩する意欲。それだけだ」
 たったそれだけで……人はなにかを勝ち得ていく。
 周りの環境がどうとか、関わったもののせいにする前に問いかければいい。
 それを打ち砕くほどの意志を自身が携えていたのかどうかを……………
 どこまでも澄みやかな声音は恐ろしいほどの至純さで示される。
 才能も何も関係はない。それを凌駕するほどに願える心を持てるかどうか。
 ………それこそが才能なのだと囁く愚か者ならもう…手助けなどしない。
 目の前にあるものいから逃げ出すものはGCになどなれない。立ち向かう意志もないのなら……いまここで断念した方がましだ。
 それでも月は知っている。
 ………子供が零した涙の意味を。
 声もなく落とされたそれを拭うのは己自身。
 立ち向かう為に………進む為に。
 朧月となった視界のなか、彼だけはやけに鮮明に冴え渡る。
 ―――――――声が響く。
 冷たいくせに優しい……包み込む月の声音。
 「ダルタニアン………お前はGCになりたいのか?……それとも…ならなくてはいけないのか?」
 答えを知っている彼には囁く声の大きさなど関係はない。
 ……それでも潰れた喉の奥、子供は必死になって叫ぶ。
 掠れた音はこの部屋にすら響かない。
 それでも彼は笑んだから。
 …………伝わった事を知って子供も笑みを落とす。

 誇り高きGCに……なれるかどうかなんて知らない。
 ただなりたい。
 彼のように……まっすぐに前を見られるように……………
 背のしなやかな背を自分ももつ事ができるだろうか。

 世界中の子供が憧れる伝説のGCなんて知らない。
 自分はこの背に憧れる。

 小さく幼い……けれど父に似たその雄大なる背。

 いつか自分もそれをたずさえる事を願いながら…………………








 というわけで初めて書きました、ダルタニアン。
 いえ、別に彼を書きたい!と思ったわけではなく、学ぶ事、を書きたくて。←ひどい。
 なのでこれは思いっきり私論です(それ以外書いた事ないだろお前)

 私は音楽と英語大ッ嫌いです。思いっきりコンプレックスあります。
 嫌いになった理由も知ってます。2歳の時に姉とともにやりたいとも言ってないピアノ無理矢理いれられて泣いて嫌がってました(それでも弾かされました/遠い目)←普通年中(4歳)以上からでないとじっと出来ません。
 英語は最年少は私一人でしかも男ばっかのなか覚えの悪い私は(からかいを多分に含んだ)意地悪をよくされまして(遠い目)
 いや、言われたら言い返すしやられたらやり返したけどね!でも一番出来が悪いので私にできる事は先生他の子に聞かなかったです。
 大抵の人には理由を話せば苦笑されて、仕方ないよねそれじゃあと言われるのですが。近頃ちょっと納得出来なくなってきたのです。

 音楽、好きになりました。学校でピアノが必修になったから見るのも嫌だったけど必死になって練習して。
 いまじゃ自分からやる必要無くなったのに練習してます。
 嫌いだったのに、好きになれるんです。じゃああの頃、私は好きになろうと頑張ったかなーと。
 一切してません。むしろ嫌いだと拒絶反応出すだけでした。
 好きになりたいとも思わないで嫌いだ嫌いだって思ってりゃ……そりゃ楽しくないですよ。
 やってみたい、できるようになりたいっていう気持ちを持とうともしなかったから、私は嫌いだったのだと思うのです。
 だから今回の話はキャラに託つけていまの自分と過去の自分を表したのです。
 ……………だから爆よくしゃべるしキツイ。

 でもこういう事をはっきりいってくれる人が私は欲しかったです。優しい人は好きですけどね。でも斬り付けても立っていられるって信じて欲しい。
 まあ我が侭な事だし、自分で気づく事に意味があるからいいのですが。