柴田亜美作品 逆転裁判 NARUTO 突発。 (1作品限り) オリジナル (シスターシリーズ) オリジナル enter |
他愛無い日常。 始まりは転がるように チャイムが響き、周りが動き始めた。ようやく昼食の時間だ。誰もがいち早く動き出す。 それは学校なら当たり前の光景。それを何とはなしに見回しながら、自分の弁当をロッカーから取り出さなくてはと頭の隅で考えていると、ふと気付いた。 見回した最後、舞い戻ったところから湧き出した、影。 黒板に染み渡り、段々そこは闇色一色になる。それに気付かないクラスメイトたちは、相変わらず朗らかな微笑ましい姿のまま、その前を通過している。 日直など、消えもしない闇を消すかのように黒板に書かれた先ほどまでの授業内容を消している。 ぞっとする。それがどういった類いのものかなど知りはしないが、それでもやはり気分のいいものではない。 逃げ出そうかとした瞬間、闇の中からぎょろりと一つ目が湧きあがる。次いで、もう一つ。更に次。………どんどんと無数の目玉が浮かび上がっていく様は、沸騰した湯のようだった。 吐き気がする。昔から幾度となく奇怪な姿はもちろん、R指定のホラー映画ですら見られないようなえぐい姿も見てきたが、慣れることはなかった。 見慣れることが出来たならなどれ程よかったか。そうであれば今こうして動くことも出来ず直視しないで済むというのに。 歯の奥がカチカチと鳴る気がする。もちろん錯覚だ。こういった時の自分の反応はよく知っている。傍目には、無表情に沈静で。内面でだけ荒れ狂う意識を必死で制御している。 ………単に両方をいっぺんに行使出来ない状態に陥るだけだが、それでも取り乱さないでいられるだけ、よかった。 混乱を極めながらも導かれる答えはいつも同じだ。 早く、歩き出してしまおう。 そういつもの如く結論を出したはいいが、それで動ければ世話はいらない。 あれだけの目玉の数だ。動けばばれてしまう。そう、どこかで臆病な自分が囁く。 それでもそんなことをいっている暇もない。落ち着くように一度呼吸を深めて肺が動くことを自身で確認する。 大丈夫、これだけの人数の中だ。いることは解っても逆に気が紛れてしまい解らないかもしれない。昔から襲われるのは一人の時なのだから。 そう考え、一歩、動く。 まるでそれが合図だったかのように、目玉が一斉に自分へと向けられた。 まずい、と考えるより早く、駆け出す。 巻き込んでしまう、クラスメイトを。どこかに逃げないと。誰もいない場所など学校内で探すことは不可能極まりない。 科学室……は先ほど移動している学生を見たから使用しているだろう。芸術系の教室も隣のクラスが使用している。体育館は凶器だらけでいくことなど出来ない。それなら外か。けれど屋上などはダメだ。自分の逃げ場がなくなってしまう。 突然疾走をはじめた自分を、慌て者だなあとのんきにいっている友人をしり目に廊下を走る。職員室に戻る前の教師が怒鳴った気がするが、聞いていられない。早く、早く行かなくては。 一人にならないと。 巻き込めない、知らない人間たちを。 だって誰も解ってくれないのだ。 それは恐いのだというのに、面白半分。 見えると知った人は、一度は自分をそういったスポットに連れていって思い知るのだ。 恐怖の、本当の意味を。 そうして近付かなくなる。自分が危険の象徴のように。 もうそれでいい。構わないから、早く逃げてしまいたい。 見えるだけでどうすることも出来ないのだ。誰もが勘違いしてくる。見えるのであれば祓えるのだと。そんな都合の良いことがあるなら、自分だって縋りたい。 走って、階段を駆け降りた。北棟の階段は特別教室へ続く方角なので、人は少ない。 そうして駆け降りた先の踊り場で、また、闇が浸食を始めた。 ぞっとして駆け戻ろうとした時には、背後に闇の目玉たち。 「……何やってんだ、お前」 進退窮まったその刹那、声とともに闇が消えた。 不可解そうに眉を上げて、無表情な男が立っている。それはつい先ほど、教室で自分もさらしていたはずの表情。けれど決定的なまでに違う気がした。彼のそれは、揺るぎなさを土台にした、静寂。 「なんでも…ない」 闇は消えた。何故かなど解りはしないけれど、何が不都合が生じたのだろう。 たまに、こうしたこともあった。あるいは無意識に握りしめた胸元の下、ポケットに入ったあの骨のおかげかもしれない。 消え入りそうな声で目の前の男に答え、ホッと息を吐く。知らない人間で良かった。また何か詮索されれば、面倒なことが起きてしまう。 どう見ても眼前の男はそうした浮ついた感がなく、立ち入ってこないようなそんな安心感があった。 教室に戻って弁当をとってこなくては。ただでさえ短い昼休みが終わってしまう。食いっぱぐれで午後の授業は受けたくはなかった。 振り返った姿勢のまま、足をくり出す。 男の隣をすれ違った時、突然腕を掴まれた。 「…………なんだよ」 訝しげに声をかける。相変わらず無表情な相手は何を考えているかまるで解らなかった。 しげしげと自分を見て、男は納得がいったのか、腕を離した。 小さく呟いた声は、確かに自分に聞こえはしたが、どういう意味かは謎だった。 教室に戻り、弁当をロッカーから取り出し、渡り廊下にあるベンチに腰掛けた頃、ようやくそれが解って憤りとともに立ち上がり、弁当は無惨な姿になってしまったけれど。 「………結局それが最悪の第一印象でした」 こぽこぽとお茶を注ぎながら、憮然とした顔で語り終えた四月一日が侑子に言った。腹立たしいのだろうが、それでもきちんと正座をしてお茶を煎れている辺り、礼儀正しさが伺えた。 それに笑いながら侑子が差し出されたお茶を受け取る。お茶を啜りつつ、まだ不機嫌さを眉に残す四月一日に問いかけた。 「なに、お弁当駄目にされたのが最悪だったの?」 「いや、そういうわけじゃないっすけど……」 言葉を濁す四月一日の肩に黒い固まりが飛び乗り、言葉をとぎらせた四月一日が目を向けるより早くに明るい声を響かせた。 「四月一日のお弁当食べたいー」 「あ、賛成〜v ちょうど公園の桜が見ごろよね、花見に行きましょうか」 「って今からかよっっ」 「さー、何飲もうかしら」 「聞いてないしっ」 突っ込みをしつつも、きっとその頭の中では桜に見合うレシピを思い出しているのだろう。ぶつぶつと文句をいいながら奥の台所へと歩いていく四月一日を追うように、モコナも跳ねるようにして歩いていった。 「………でもね」 ふい、と、その背中に声をかける。深く澄んだ、全てを見渡したような、目で。 「どれほど腹立たしかろうと、縁は縁」 キセルをすくいとり、口に付ける僅かな間、面白げに侑子は笑んだ。 「きっかけさえ出来れば、あとは、転がる石よ」 その先がどんなものかは転がりながら決めるだけ。 転がったその事実だけは覆せず、消し去ることも出来ない。 難しくややこしいことを背負っている彼が、どんな未来をその手で選ぶか自分には決めることは出来ない。 ………無秩序の中の秩序を手繰りながら、侑子は笑んだ。 特にリク内容はなかったので。こんな風にまとめてみた。 侑子さん大好きです!美人だ!! ちなみに。百目鬼が四月一日にいったことはまあ……適当に想像して下さい。 一応あったはあったんですが。それもどうよ百目鬼さん。と私が言いたくなったので削除。 出会った瞬間にむかついたのではなく、話した途端にむかついたと思いたい(笑) そのうち原作で初対面の話とかしそうよね。まあそのときはそのときで。無視してくれ。 05.3.4 |
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