柴田亜美作品 逆転裁判 NARUTO 突発。 (1作品限り) オリジナル (シスターシリーズ) オリジナル enter | その日はそれほど混んでもおらず、比較的スムーズに作業が進んだ。おかげで当日分の仕込みも普段より早めに終わり、ほんの少しだけだったけれど、余裕も生まれた。もっとも、まだ明日の準備も雑務も残ってはいるのだけれど。 手近にあるコップの中の水を口に含み、久しぶりにフロアの様子を見ようかと考えていると、そのフロアへと続くドアが開き、響也が顔を覗かせた。 「成歩堂さん、シャルロット入りました」 ひらりと伝票を見せながら響也はそう告げ、指定の棚に伝票を載せる。そうしてそのまま奥に進み、一緒に頼まれたらしいドリンクの準備をしていた。 その様子を眺めながら成歩堂は頷き、すぐに用意する旨を応えながら皿を取り出した。 冷えた皿にシャルロットを倒して乗せ、カットフルーツを手際よく散りばめる。フルーツソースを皿の外円に添わせるように垂らし、ミントの葉で飾り付ければ完成だ。 手が空いていれば物の数分もかからずに終わる作業だが、作業の合間に行なうとなると多少なりとも勝手が違う。 普段の自分の慌てっぷりを考えると、まだまだ拙いと思うことは多い。今はまだ製菓にばかり時間がかかってなかなか思うように他の仕事に手が出せない。残業すれば他のスタッフたちが心配をして同じく居残ろうとするし、店と同じマンションに自室を持っている神乃木は帰ろうとしてもくれない。 幾度己の手の遅さに溜め息を吐いたか、解らない。最近ではそれが顕著な気もする。………それくらい忙しかったという事だけれど。 もっと余裕とゆとりを持って万事に対応出来ればいいとも思う。神乃木ほどとまでは遠く及ばないとしても、もう少しは。せめて今日くらいの作業ペースが常に保てればいい。まだやる事は山とあるけれど、最近の中では随分早めに区切りがついた方だ。 盛りつけの終わった皿を最終確認しながら、ふと気づく。 神乃木は、パティシエたちの中で一番忙しい。担当製菓がパイやタルトと言う手間のかかる分野である上、店長としての仕事もある。にもかかわらず、他のパティシエのサポートにも入るし、フロアにも一番顔を出して響也たちを手助けしている。 基本的に人手の足りていないこの店では、パティシエだってフロアに提供に行くのだ。響也は半々の割合で仕事を請け負っているが、霧人は製菓を主として担当している。けれど、王泥喜が休みの日などは積極的にフロアに出ていたりする。 手助けを受ける度に謝っていれば、直に菓子を口にする客と向き合う事も勉強になると、彼は優しげに微笑んでくれた。………それは、当然の原点だろう。この仕事につく事を考えるなら、まず第一に思うべき存在はお客様の笑顔なのだから。 けれど、自分はどうか。そう考えて、成歩堂は最近特にフロアに出ていない事にようやく意識が向いた。 製菓に追われ、雑務に追われ、気づけば周囲のスタッフたちが盛りつけ終わった皿を、自分が持っていくよりも先にフロアへと運んでくれていた。 勿論礼もいっているし、それ自体は問題ない。問題はないけれど、将来この店を背負う立場にいながら客の声を直に聞ける機会を減らしているのはいい事ではないのではないか。 みんながそれらを伝えてくれて、優しくフォローしてくれるから、そんなことにも思い至らなかった自分に、少しだけ凹んでしまう。 この店で働くスタッフたちは優しくて熱意に溢れている。どれほど感謝しても足りないほど、自分を支えてくれている。 その優しさに甘えてフロアを任せきっていた事にも気づかないほど、余裕がなかったのか。 小さく溜め息を吐き、成歩堂はシャルロットを載せた皿を手に歩き出した。気づいた霧人が顔を向ければ、声を掛けるより先に首を振られてしまう。 いつもこうしてフロアヘ行くより先に彼らが手助けを申し出てくれるのだ。けれど今日は一段落がついて、フロアヘ行けないような状態ではない。 そんな時くらいはこの店に訪れた人たちと交わるべきだ。 幸せを、笑顔を分かち合える場所にしたいと、思うのだ。それならば、それを提供する自分もまた、それが確かに差し出した相手に届くべきものかを見極めるべきだ。 響也が置いていった伝票を確認し、テーブル席を確かめてから伝票を手にしてフロアヘと続くドアを成歩堂は開け、その姿をフロアヘと吸い込ませてしまった。 その後ろ姿を見ながら、霧人と神乃木は無言で顔を見合わせ、一人は深く忌々しげに、もう一人は軽く苦笑をするように、溜め息を吐いた。 成歩堂がドアを開けると同時に、足元で大きな黒い固まりが動く。いつもドアの横にある流しの下で待機している飼い犬のミツルギだ。すでに飼い主の香りを嗅ぎ分けていたのか、定位置の流しの下ではなく既に立ち上がって出迎えている。 目を輝かせて飼い主を見上げたミツルギは、尻尾を振ってその顔を見れた喜びを示していた。けれどすぐに成歩堂の持つ皿の存在に気づき、構ってもらう事が出来ないと解ってしゅんと項垂れてしまう。 邪魔をしないようにとまた定位置に戻った飼い犬に、成歩堂は小さくごめんと告げ、あとでねと、戻って来たら撫でる約束を他のスタッフには聞こえないように小さく付け加えた。 ………飼い犬を甘やかしていると、いつも霧人に叱られるのだ。彼の言い分は筋が通っているし、現状が自身の我が侭である事も成歩堂は十分理解していた。 そしてなによりも霧人自身が注意喚起を向ける矛先は、いつだって自分の無茶や無理を諌めるためのものだ。いつだって誰もが嫌がる損な役回りを彼は買って出てくれている事も、知っているのだ。 だから店の中ではほんの僅かだけしか、愛しい飼い犬の我が侭は叶えてはあげられない。こればかりは職を全うするためにも決して踏み越えてはいけないラインだ。 それを十分心得ている飼い犬は、それだけで十分だと言うように嬉しそうに甘えた声で鳴き、小さく尻尾を振ってから踞った。 相変わらず賢くこちらの意図を理解してくれる飼い犬を誇らしげに笑んで眺めたあと、成歩堂は改めてフロアを見渡した。 さして広くはない、けれど常連客で賑わう店内は程よく閑散としていてゆったりとティータイムを満喫出来る雰囲気だった。 それを確認して少しホッとした。居心地がいいだろう光景は、目にも優しいものだ。 そうして首をまわし、目当てのテーブルを見遣ると、目を丸めた女の子が一人、こちらを見ていた。その見覚えのある顔に、成歩堂の顔もほころんで笑みを作る。 「いらっしゃい、マコちゃん」 「お久しぶりッス、成歩堂さん!スズキ、感激ッス!」 テーブルに皿を置きながら声をかけると、予想以上に元気のいい声が元気のいい敬礼とともに向けられた。 彼女は常連客の一人で、婦人警官だった。その職務への熱い情熱故か、私服姿でもつい敬礼をしてしまう癖がある。 相変わらずだなと微笑ましくそれを見ながら、成歩堂は首を傾げた。彼女の発言が若干、掴み切れなかった。 ケーキは、彼女が頼んだものだ。持ってくる事を感激されるわけもないだろう。それなのに、彼女はいま確かに感激と言った。 なにか普段とは違うサービスでもあったのだろうかと思ったが、彼女の座るテーブルには伝票に記載されていた今の時期限定のハーブティー・カルテットがあるだけだ。 なんの事だろうかと思っていると、問うまでもなく彼女が目を輝かせて成歩堂を見上げながらその言葉の続きを口にした。 「滅多にフロアに出てこなくて、スタッフみんなに出し惜しみされていると言われるあの成歩堂さんが、こんなに近くに!いつもは入口から見える硝子越しの、楽しそうにケーキを作る姿だけなのに!」 「……………ごめん、滅多に出てなくて…」 やはり常連客にはフロアにいない事はバレていたらしいと、思わず暗雲を背負いそうになる。とはいえ、今成歩堂が立つ場所はフロア。他のお客様もいる中で不景気な顔をしては、折角の楽しいお茶の時間が台無しになってしまう。 そんなプロ意識を総動員させて、垂れ下がった眉毛だけに落ち込みは留めて、少しだけ情けない顔で成歩堂は笑った。 「な、成歩堂さん?!」 突然落ち込むようにシュンとした雰囲気を纏わせた、いつもは楽しげにキッチンで奮闘している成歩堂にマコはギョッとしたように声を掛ける。が、やはり向けられる笑みはどこか力がない。 何か自分が不要な事をいったのだろうかと、マコは混乱しながら立ち上がる。立つ必要もないということすら、頭には回らなかった。 フォローはいつだってされる側で、自分がする事がない。一体なんといえば彼が笑ってくれるのか、マコ自身全く解らなかった。そもそも一体何故成歩堂が落ち込んだのかすら解らないのだから、その修復方法とて解らなくて当然だ。 それでもなにか言わなくてはと、必死な形相でマコは口を開いた。 「だ、大丈夫ッス!いつものスズキの人生は不運とアクシデントに塗れて展開されるッスけど、成歩堂さんがケーキ持ってきてくれた今日は、きっと絶対に小さな幸せが訪れるッス!」 それくらいレアな経験ッス!と話せば話しただけ更に混乱してきた頭で叫ぶ。内容もチンプンカンプンだし、何を伝えたかったのかもよく解らない。 ただ………決して自分は悪い事としていったのではないと、そう知って欲しかった。 成歩堂がキッチンにいて会えないのは寂しいと思う事もある。けれど、そんな彼に変わって出てくるスタッフたちは、時折常連の自分にも彼の事を教えてくれるのだ。 新作のケーキの仕上げに苦心しているとか、子供が食べやすい盛りつけの工夫を考えているとか、語られる言葉はいつも優しく温かく、誰かを思う行動で彩られていて。 それを伝える声すら、思いやりに満ちている。そんな、どこか絵本の国のようなこの店の雰囲気。 それは、紛れもなくこの人が形成していると、通う人は知っている。顔を直に見れなくても、思いは人から人へ、作られたお菓子から心へ、確かに届くから。 伝えたくて、けれど伝えきれないそれは、言葉にはならないものだ。歯痒くてもどかしくて、マコはぎゅっと拳を握った。 すると…………ぷっと、吹き出す声が間近で聞こえた。それは押し殺すような、忍ぶように噛み殺した、笑い声。 きょとんと気が抜けたようにその音の出所を見遣ってみれば、予想通りに成歩堂は少しだけ肩を震わせて笑うのを堪えていた。 そんなマコを見ながら、彼女を笑ったわけではないと首を振りながら、成歩堂は困ったように破顔していた。 マコの大声に、店内の視線は当然のように二人に集中している。スタッフに対して客が大声を出している、それだけの構図ならば苦情やトラブルを想起させるのに。 けれど彼女の伝えようとする言葉は、稚拙だけれど、極上の好意と労りだ。 バカみたいに自分は焦ってなにも出来ないままだと落ち込んで、高みばかりを見上げて溜め息を落としていたけれど、それは少しばかり見当違いだったのかもしれない。 ………自分で自分を追い詰めてもろくな事などないというのに。そんな自分のバカさ加減に思いっきり笑ってやりたい衝動が湧いて仕方がない。もしもここが自室だったなら、お腹を抱えて大笑いしている所だ。 そんな自分に驚いたのか、いつもは定位置から決して動かないミツルギが遠慮がちにテーブルを縫って歩み寄り、慰めるように膝に鼻を押し付ける。 …………自分は本当に恵まれていると、いつも思う。痛みもあるし喪失も知っているけれど。それでも、それらを乗り越える力を、いつだって誰かが貸してくれるのだ。 キッチンもフロアも店長としての責務も。まだパティシエとして駆け出して数年の自分が背負い切れるはずもない。今はまだ、技術取得を主に努力すべき時期なのだ。だから、スタッフたちはそれを優先してくれているのだろう。 少し首を巡らせれば、心配そうにこちらを見ている響也がいて、キッチンに繋がるドアの所には霧人とその奥に神乃木が見える。レジの方からは遠慮がちに王泥喜が覗いていた。 ………ただ顔を見れる、それだけで嬉しいことだって、確かにあるのだ。それはクローバーをお守りにするような、愛らしくいとけないおまじないじみた、微かな幸せの予感。 それを忘れて、何を成したいというのだろう。出会える喜び。笑顔の循環。……それが祈りの店だ。手に取る事は出来ないけれど、未来への小さな幸福の種をプレゼントする、店だ。 思いを込めて菓子を作り、それを愛してくれる人たちが足を運んでくれる。思いの全ては、作り出したものと通う足が証明してくれる。 まだ出来る事の少ない自分が欲張ってはいけないのだ。決して自分は器用ではないし、天才でもない。それなのに欲張っては、きっと、思いが交差し過ぎてブレてしまい、互いの祈りが重ならなくなってしまう。 今はまだ、滅多に出会えないとか、レアな経験とか、そんなレベルだと自覚して切磋琢磨すべきなのだろう。まだスタッフたちの手助けが必要な駆け出しなのだから。 上を見ればきりがないのだ。足元と、前を。しっかりを見据えて、出来る事をきちんと習得していこう。 あれもこれもなど欲張らず、小さくても一歩ずつ進めばいいのだから。 ………いつかは、彼女にさえ会えるのが当たり前だと言われるようになりたいけれど。今はまだ、小さな幸せの予兆で収まってみようか。 そう思ったなら、ここ最近重かった腕が、なんとなく軽くなった気が、した。 それは多分、彼女が口にしていた、小さな幸せの訪れ、だろうか。そんなことを思い小さく笑い、その気遣いを胸の奥まで満たすように飲み込んで、マコを見遣った。 「ううん、いいなって思って。小さくても嬉しい事、あるとね」 そう、いって。彼は優しく溶けるように、笑った。告げた本人すらよく解らなくなった、そんな言葉を飲み込んで、柔らかく花開く、音。 …………あまりにも単純な、それは善良な祈り。 ささやかでありふれていて、見落として当然な…そんなことを、けれど彼は戯れ言と終わらせずに、同じ祈りを織り交ぜて、その言葉こそが幸せの種だというように、笑うのだ。 足元に擦り寄る飼い犬を愛おしそうに見下ろして、成歩堂はどこかすっきりした顔で頷き、みんなにもと、透き通る音で小さく囁き飼い犬の頭を撫でた。 それは優しく響く、この店の音色。大好きなケーキと同じ甘く優しく癒してくれる、そんな音色。 マコはその音に嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、大きく頷くとまたビシリと敬礼をして成歩堂に告げた。 「はいッス、保証するッス!現にスズキ、もう小さな幸せ、訪れたッスから!」 「え?もう?」 「はいッス!しっかりばっちり、届いたッス!」 目を瞬かせながら不思議そうに答える成歩堂に頷き、ちらりと店内を見渡す。当然ながら混んではいないとはいえ客のいる店内なのだから、多くの目がこちらを見遣っていた。 けれどそれらは、どこか柔らかく日差しに溶けるような、そんな幸せな色を灯していた。 それがきっと彼がフロアに現れた時の、何よりも確かな幸福の証だろう。けれどそんなことは口にするのは無粋だし、彼は知らないままでもいいのだ。 ただ彼が彼としている、それだけで甘く蕩ける甘味にも似た和らぎを味わえるから。 マコは笑い、満足そうにもう一度頷いてから椅子に座った。テーブルの上には今か今かと食べ頃のケーキが待っている。早く食べなければ罰が当たりそうな、美味しそうなケーキ。 「自分、成歩堂さんの大ファンッスから。ケーキが食べられるだけでも、十分本望ッス!」 目を輝かせながらそんなことをいい、元気よくいただきますと告げてからマコはケーキを食べ始めた。 それに幸せそうに成歩堂は綻ぶ笑みを浮かべたあと、そっと頭を下げて飼い犬とともにテーブルを離れた。 さざ波のように、店内には笑顔が満ちる。一滴の波紋が広がるように、捧げられた笑みは伝播し、空間を彩っていく。 「…………いつもの事ながら、見事だよね、アニキ」 「あればかりは成歩堂の個人技ですよ」 才能とか技術とか、そんなものではなく、個という命の根源から醸されるものだ。真似る事など誰にも出来まいと、霧人は軽い溜め息とともにいう。 そんな素直ではない評価も兄らしいと響也は笑い、戻りくる成歩堂にフロアを自分たち兄弟がやる旨を伝える。混雑しない間に、今はまだなんの戦力にもなりきれていない新人の王泥喜の手解きを依頼した。 心得たように頷く成歩堂は、随分とすっきりしたような顔をしていてほっとする。 王泥喜に声をかけ、そのままショーウインドーの方からキッチンに向かうだろう背中を眺めながら、響也は苦笑した。 「なんかさアニキ。少しだけ悔しくない?」 「なにがですか」 「だってさ、僕たちだって心配していたし、彼女と同じ事、伝えたかったじゃないか」 少しだけ拗ねたように唇を尖らせている響也の言葉に、ちらりと霧人は視線をむけ、ほんの数秒の沈黙のあとに、眼鏡の位置を指先でずらして視線を読ませないようにしてから、呟いた。 「関係ありませんよ。結果的に成歩堂が抱え込まないことを理解したのなら、それで十分でしょう」 素っ気ない声で切り離すようにそんなことをいう兄を見遣り、背中のキッチンへと続くドアを眺めてから、軽く息を吐いて肩を竦めた。 「アニキも素直じゃないよね」 「あなたの勘違いですよ」 「大体さ、いっつもアニキが成歩堂さんの代わりにフロアに出るのだって、ミツルギやオドロキくんのミスが増えるからだろ?」 成歩堂に意識を向け過ぎてそれ以外が疎かになりやすい一人と一匹が失敗をすれば、それはそのまま成歩堂への負荷になるし、同時に精神的にも重荷を増やすだろう。 抱え込みやすい人だと、出会った時から解っていた。自身の荷物を人に見せる事がヘタな人だとも。 だからこそ、その重荷を少しくらい分けても平気だと伝えたくて、こうしてここで働き始めたのだ。それを暗に示唆した兄が心得ていないはずがないと、響也は確信的な笑みを兄へと向けた。 「成歩堂の手が遅いからですよ。それ以外に理由などありません」 眼鏡の奥の兄の瞳は淡々としていて冷たくも見える。それを覗きながら、吹き出すのを必死に響也は耐えていた。 クールな仮面の下、熱い命が脈打っている事くらい知っている。 …………そして多分、誰よりも一番成歩堂を甘やかし支えとなろうとしている心配性が誰かも。 硝子越しの視線で緩和されるとでも思っているのか、存外鈍い一面もあるものだと、本気で隠し通せていると信じている兄の甘さを響也は嬉しそうに享受した。 多分、誰もがみんな癖があり難物の集まりだった 棘ついていて、ゴツゴツしていて、 きっとどれほど手を施しても甘い菓子になどならない、そんな素材 けれどたった一人の命の煌めきを降り注ぐだけで 緩和し溶け合い補完し支え 祈るに足るべきもを具現する クローバーのように不確かで けれど誰もが知っている幸福のしるし …………それを守れればと、祈りとともに。 いや、私が書きたかったのはCHIHIROでパフェが無いのはなんで?という素朴な疑問の解答だったのだが。 マコちゃんまで出てもらってそこで終わるか。てかなんで話が入れ替わるか。 そんなわけで多分この顛末がいつの間にか定着して『成歩堂に給仕されたらちょっとラッキーな事がある』的なジンクスが生まれるんでしょう(笑)やったねマコちゃん、生き証人だよ! 今回はまだ御剣が来る前の話です。オドロキくんに少しずつ製菓を任せ始めた感じ。そんな頃なので人手は足りません。むしろ全員が忙殺くらいに足りていません(きっぱり) ………そう考えるとフロアでの負担が減った分、御剣の働きは大きいんだな。ギャルソンしか出来ないけど。ラッピングも出来ないけど。 御剣が来てからは更に成歩堂がフロアに行かなくなったので(ミスる人間増えたからね!)希少度アップ☆ 09.7.14 |
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