柴田亜美作品 逆転裁判 NARUTO 突発。 (1作品限り) オリジナル (シスターシリーズ) オリジナル enter | 「うーん……やっぱり値上がりかぁ」 ファックスを見ながら溜め息が漏れる。勿論、事前に店を訪れた担当のものがきちんと説明をしてくれているし、そのこと自体に不満もないし文句もない。 そもそも原因自体どうすることも出来ない自然現象が相手なのだ。文句のつけようがなかった。 「どうかしたんですか?」 丁度雑務室にクリアファイルを戻しに来た王泥喜が、成歩堂の呟きに首を傾げている。おそらく明日の会議で何か提案があるのだろう、過去のメニュー表をここ数日王泥喜は熱心に読み返していた。 それに笑いかけ、成歩堂が手にしていたファックスを読みやすいように王泥喜の方に向ける。彼の視線がざっと内容を把握している時間を待って、成歩堂は口を開いた。 「まあ仕方ないんだけどね」 「チーズ値上げですか……小麦粉も」 「多分、その内乳製品は大部分がそうなるよ」 呆然と提示されている値上げパーセンテイジを見つめてる王泥喜の声に頭痛がする思いで成歩堂が応える。 値上げの品の大部分が菓子製造には欠かせない原材料ばかりなのだ、これで頭を悩ませるなという方が無理に決まっている。しかも10円や20円という過去に置ける可愛い値上がりなどではない。中には数百円単位で値が上がったものさえあるのだ。 「乳製品って……まさかバターや生クリームもですか?!」 ギョッとして王泥喜が大声を上げた。当然だろう、乳製品を使わずに作る菓子など、ほとんどあり得ないのだから。 予想通りの王泥喜の反応に成歩堂は苦笑して、手にしていたファックスをまたテーブルに戻した。 「だって、牛が居ないからね」 「…………いないんですか、牛」 至極あっさりと返された返答に一瞬王泥喜が言葉に詰まる。なにを問いかければいいのか解らなくなり、取り合えず思ったことを告げたら、なんとも間の抜けた問いかけになってしまった。 それを笑うでもなく、成歩堂は首を傾げて教わらなかっただろうかと前置きをしてから説明を始めた。 「ほら、2002年辺りからずっとオーストラリアで干ばつがあっただろ?」 「えー……っと、ああ、なんかそんな話を聞いた覚えがあるようなないような………」 「………多分、製菓学校だと思うよ。あそこから牛乳を輸入して加工しているから、干ばつの影響で牛乳自体の輸入が厳しいんだよ」 うろ覚えな記憶を必死に思い出そうとしているらしい王泥喜が頭を抱えて唸っているのを横目に、さっさと成歩堂が説明を進める。 別に教えてはいけないことではないし、ましてや意地悪をするようなことでもない。事実は事実として認識して、どう打開策を練るか。そちらの方にこそ頭を悩ませて欲しいのだ。 「あれ……でも、そうするともしかして、ドライフルーツとかクルミなんかの木の実系統も………?」 成歩堂の言葉にようやく頭が追いついたらしい王泥喜が途方に暮れたような顔で呟いた。 どうかしたのかと首を傾げてみると、泣き出しそうな顔のまま王泥喜が言葉を続ける。 「お、俺、スコーンの種類を変えようかなって思っていて……」 「スコーン?テイクアウト用?」 「いえ、アフタヌーンティーセット用の……、大きいプレーンを1つより小振りでも2種類の方が女性は喜ばれるんじゃないかなって。だから………」 首を傾げて話を進めてくれる成歩堂にしどろもどろになりながら王泥喜は必死になって説明をする。 これのために、ここ数日間というものの明日の会議で候補作をあげるために、過去の資料を見て合いそうな素材を探していたのだ。 それらが全部ダメになってしまっては、折角考えたメニュー改善自体が無に帰してしまう。ようやく自分が手を加えられるようになると思ったのに、それはあまりにも悲しかった。 「……でも、やっぱり、合いそうなのって……ナッツとか、ドライフルーツで……だから………」 段々となにを訴えたかったのかが解らなくなってきた混乱する頭をどうにか冷静にしようとぎゅっと目を瞑る。視界が遮断された分、情報処理の意識を全て脳に向けられた。 そうして出来れば成歩堂が呆れる前に考えをまとめて、ちゃんとした意見を言いたいと思っている所に、ぽんと、何かが額に当たった。 それは一瞬で、なんだったのか、把握も出来ない。………けれど反射的に開いた目の中には成歩堂の手のひらが写っていて、彼が自分の額を叩いたのだと、それによって認識できた。 「じゃあ、どれが美味しいか、ちゃんと明日作ってみんなに評価してもらわないとね」 「え………?」 「お客様が、喜んでくれるんだろ?」 それならそれが一番だ、と。成歩堂は嬉しそうに目を細めて微笑んだ。 原材料の高騰は悩みのタネだけれど、それによって質が落ちるのもやる気が削がれるのも避けたいのだ。そんな中、新人パティシエが必死になってくれるなら、ベテランたちだって努力を重ねてくれるだろう。 一生懸命さで誰よりも頑張ろうとしてくれる小さな新人の肩を叩いて、彼には伝わらないだろうと知りながら、感謝の言葉を口にした。 アフタヌーンティーセットの初期案は店で出ているものを使用する形だったので普通のサイズのスコーンだったということで。そこに改良加えたのがオドロキくん。新人二人で成り立ったアフタヌーンティーセット! という、微笑ましい話を作っちゃえ☆だったんですよ、初めの目的は。…………なんで微笑ましい感じがしないんだろうか。多分それは一応成歩堂を巡ってのライバルになるせいか。いや、どっちもどっちな気がするけど。 まあ、この話だけであれば平気だよね。というか、私が書く分には微笑ましい領域で終わると思う。二人が関わらないせいもあるけれど(オイ) んで。そんなわけだからバターは品薄なんですよ、皆さん。一応家庭用のものは一番最後まで優先されるから平気だと思うけど、業務用は既に大打撃。 どうなるやら………と遠くを見つめてしまうほどですわ。 しかも原材料大部分が値上げだから、それだけで一ヶ月の材料費10万以上多くなっちゃうんだって。絶句するよね☆ 07.12.3 |
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