「……………訳わかんねぇ」
朝一でまたそんな言葉を呟いて、青年は起き上がった。周囲を見渡す仕草さえ前日と同じで、溜め息が落ちそうだ。
確認などしなくても解る。記録した通りの風景と、それとは違う本の配置。
「ジジいー起きてるかー」
「………………またか」
「あ、やっぱ聞いてたさ?うん、そうみたい」
そう言って下のベッドから上のベッドへ顔を覗かせた青年は、辟易とした顔で老人を見遣った。
「なんかさ、もう俺、『ラビ』じゃなくて『ディック』なんじゃね?『ラビ』のヤツ、俺の事追い出す気さ??」
戯けた調子でそんなことを言ってみれば、視線も向けずに老人は答えた。
「阿呆。多重人格でもあるまいし、そんな真似が出来ると思うか。理由は己の中にある。さっさと気付いて対処せんか」
「………………や〜っぱジジイ、なんか勘づいてんさ?勿体ぶらずに教えろって!」
こうコロコロと記憶が交差していては、まとまるものもまとまらない。『ラビ』でも『ディック』でもどっちでもいいから、取り合えず安定する事がまず第一だ。
そもそも、こんな風に過去と現在で振り回されては記録だって覚束無い。それはこの老人の跡取りとして、あってはならない事だ。
歯痒さを隠して不貞腐れた声で言ってみれば、老人の嘆息はひどく重い響きで室内を満たした。
珍しいと目を瞬かせた先、眼光鋭い老人がベッドの縁にへばりつく青年を見下ろした。
「言った所で無意味な事だ。おぬしが自分でそうしない限りはな」
そう呟いて、昨日告げた通りに振る舞うようにという注意ひとつで、あとは全てを無視されてしまった。
一度そうだとしてしまえば、この老人は何をしても振り返らない。それは頑固なのか意志が強いのか微妙に判断に困るが、とりあえず足掻いても無駄である事だけは確かで、青年は先程の老人並の溜め息をわざと吐き出して、ベッドから退いた。
伸びをして、周囲の本や新聞の中、まだ自分が記録していないものを確かめる。その数点を朝食の前に読み切ってから、青年は脳内の地図に書き記されている食堂へと向かった。
その後ろ姿を見遣りながら、老人は時計を見つめ、騒ぎが起きるかどうかをほんの少し思案したあと、手にした本を読み終わる10分程度の間を空けて自分も食堂に赴こうと決めた。
まだまだ手のかかる弟子と、放っておくには忍びない少年を脳裏に思い浮かべながら。
食堂はそれなりに混んでいた。
元々ここは時間の感覚が一般的ではなく、それぞれが任務に合わせて食事を摂る為、常に人はいるし、特別雑多な程混む事も珍しい。
それを眺めながら、見回した視野に映った、一際大きな食事の山に既視感を覚える。
明らかにそれは、自分が昨日見た食堂の風景と同じだ。青年は自分用のパスタを注文すると、興味を引かれてその山の一角を目指して歩んでいった。
顔見知りらしい人達が青年に声を掛け、挨拶をしてくる。それに同じように愛想よく返し、一人ずつ情報を上書きした。教団内の人間の個人データーは全て頭に入っているけれど、それはあくまで2年前のデーターだ。
そこから消えたデータや逆に増えたデーターは昨日、師から全て教えられた。合致しないデーターがない事に、取り合えず自分の脳に異常がない事を確認してホッとする。
そうして歩み寄った食事の山の一角で、見え隠れしたのは白。
揺れるというよりはぶれるような勢いで動く白い髪が、勢い良く豪快に皿を平らげていっている。その食欲が一体どこから湧くのか問い質したい程細くて白いその少年は、幸せそうに次々と食事に手を出していった。
呆気にとられてそれを眺めていると、周囲は既に慣れているのか、さして気にもしないで微笑ましそうに眺めていた。確かに量の問題はあれど、こうして幸せそうな笑顔で物を食べる子供は、無条件で可愛いものだろう。…………しかし、量に限度はないだろうか。
自分の持つ皿がひどく貧弱に思えて吹き出しそうだ。
そう思いながら、青年は少年の食事の山で埋もれていない、彼の隣の席を一つ空けた状態で椅子を引く。それに気付いて、フォークを手繰っていた指先が止まり、キョトンとした眼差しが上がった。
その瞳が綻ぶように柔らかく喜色を染めた瞬間、思わず目を瞬かせてしまう。
昨日……正確には、自分が記憶している最後の時間、彼はまるで人形だった。動かない身体、全てが抜け落ちた表情。そして、意志の全てを手放したような、拒絶の瞳。
呆気にとられてそれを見た後、自分の意識は途絶えた。多分、そこから今朝までは『ラビ』だった筈だ。
……………それでか、と。納得がいった現状に、けれどどこか苦味がある。
他の誰もが『ラビ』に向けるのと同じ笑顔を自分に向ける。何も気付かず、当然のように受け入れている。
それを見破ったこの少年は、昨日は全身で自分を拒否して、消えたもう一人を追い求めていた。
そして今、彼は嬉しそうに自分を見た。それはひとえに、昨日の事実はもう終わり、今目の前にいるのはいつもと変わらない『ラビ』だと信じて疑わない、愚者の眼差しだ。
一度は気付いても二度は無理かも知れない。そう思い、青年は屈託ない笑みを浮かべて引いた椅子に座り、少年に声をかけた。
「おはよ、アレン」
途端に、少年の瞳が曇る。鮮やかに輝いた色が顰められ、けれど表情だけは変わらず笑みを象って、じっと青年を見ている。
それは色を無くした表情で、親しみの溶けた先程の瞳が嘘のようだ。
「おはようございます。……今日はブックマンは一緒じゃないんですか?」
声も、固い。けれど多分、それは周囲には響かない程度に抑えられていて、青年以外には解らなかっただろう。
その反応に、青年は少年が違いに気付いていう事を知った。
何が違ったというのか、それが解らずに青年は目を瞬かせた。けれどそれを言及するには、食堂はあまりに場が悪い。
いつ誰が話を聞くか解らない場所でする話でもないと、瞬かせた瞳の理由を別のものにする変えるように、青年は少年に答えた。
「まだ本読んでたさー。まあすぐ来る筈さ。何、ジジイになんか用?」
俺にはないの?と。茶目っ気たっぷりに笑んで問い掛ければ、苦笑が浮かぶ。それは多分、仕方ないとかそんな風に受け止められる笑み。…………その瞳だけは、相変わらず硬質な輝きを宿していて、相手との距離を推し量っているようだったけれど。
なんとなく、その瞳を知っている気がする。なんだっただろうかと脳内を検索して、引っ掛かった情報に、青年こそが苦笑しそうだった。
記録地でよく見かけた、孤児の瞳だ。縋るものがないと知っていて、それでも生きなくてはいけないと生きている。なんの為に生まれたかも、何故生きているかもしれない、ただ生きる為に生きている瞳。
その中の、特に諦観の色濃い子供の瞳だ。それがどう成長するかはその子供によって様々だけれど、この少年は先程の顔を想起するならば、随分マシな育ち方をしたようだった。
…………もっとも、今現在はまだ成長もしていない顔で笑っているけれど。
「いえ、昨日言っていた、なんか難しい名前のハーブ、クロウリーがもしかしたら温室で世話している中にいるかもしれないって言っていたので。ほら、あの………気を高めるハーブ、でしたっけ?」
だから教えたかったと、ちゃんとこちらが昨日の記憶がない事を考慮して、名前の解らないハーブの効用を付け加えながら少年が言った。
勘がいいし、機転も利くタイプだ。こうして笑んで話していても目を合わせないのも、食事に集中しているからという風に、自然に見せている。
青年は少年を観察しながら、周囲がまるで違和感を覚えない程自分達が普通である事に内心笑った。
こうして、椅子をひとつ隔てていても隣に座りながら、少年の雰囲気も表情も柔らかい。のに、その声に溶ける心だけは、ひどく遠い。
「ああ、シベリアンジンセングか。あるかもっつー事は、ガーデニング中だよなー」
言われた情報の中、老人が愛飲していたものをいくつか思い浮かべ、ヒットした情報を口にする。正しかったらしく、少年は頷いて同意を示していた。
「多分、そうだと思いますよ。どうかしましたか?」
たとえ育てている最中でも、大きささえ問題がなければ収穫してフレッシュハーブティーに使う事は可能だ。何か問題があるのかと目を向けた少年の瞳は、純粋な疑問が広がっていて、先程までもささやかな警戒が薄い。
それを意外に思いながら、青年は苦笑してハーブの名に付随して出てきた情報を口にした。
「いんや、あれって、ハーブティーで使用するのは根っこなんさ。飲むとしたら収穫して乾燥させてかさらね」
「…………そうなんですか?そっか…ブックマン喜ぶかと思ったのに、すぐには無理なんですね」
残念だと、しゅんとした顔と雰囲気だけですぐに解る。少しだけ近づいた心の距離に、目を瞬かせながら少年を見つめていると、唐突に間近で気配の数が増した。
ギョッとするまでもない、慣れ親しんだ気配だ。いつの間にか食堂に来ていたらしい老人が、少年と青年の間の、ひとつ間を空けていた椅子を引いて座っている。
それに気付いた少年が、何を言うでもなくすぐに、老人の前に積まれている皿を逆隣へと動かした。
自然なその流れを観察しながら、どうやら自分がヘマをしていたらしい事に気付く。
………多分いつも、こうして少年と一緒に食事をする時は、片側に並ぶのだろう。そうしなければ少年は誰も隣に座らせる事が出来ないくらい、沢山の料理に囲まれる。
にっこりと嬉しそうに笑んで老人を見遣っている少年の様子にそれが窺え、なんとなく面白くない。言われれば、自分だってそうしたというのに、教えないで割って入る老人も老人だ。
情報が足りない。昨日老人から与えられた情報は、どれも全てが記録用だ。こうした日々のささやかな情報は含まれていないし、含む意味も確かに無かった。
けれど、今は別だろう。ここで自分は2年を過ごし、それなりに人の輪に加わり上手くやってきていたのだ。それならば、周囲に異変を勘づかせない為にも、もっと完璧に『ラビ』を模倣する必要だってある。
目標は、この少年すら気付かない程、完璧にトレースする事だろうか。
思い、なかなか面白そうなゲームだと、青年はにっこりと笑んでいた。………その隣で海鮮粥を口にする老人が、呆れたように目を眇めていた事すら気付かずに。
少年の部屋をドアを、青年は軽やかにノックした。手には約束していた料理長特性のアフタヌーティー用の菓子の詰まったバケットが下げられている。
結局朝食の席で、老人にハーブの情報を残念そうに告げた少年は、それならば別のハーブをいくつかブレンドして、似た効用のものを試してみようと提案した。
そうした知識ならば少年よりも青年や老人の方が秀でていて、それを知らない筈のない少年の提案に、青年は目を瞬かせたが、老人は楽しげに目を綻ばせて頷いていた。
そこには確実に流れる時間の差異が鎮座している。どう足掻いても、今の青年には少年の意図が解らない。
それが解っていたのだろう、少年はパチリと音がしそうなウインクをその長い睫毛で綺麗に決めて、楽しげな笑みで老人と青年に『アフタヌーンティーをしましょう!』と、朝食も食べ終わらない内から宣言したのだ。
今もまだ周囲の噛み殺した笑い声が耳に残っている。子供のように意気揚々としたその発言は愛らしいものだが、まだ朝も早く食事も終わる前から、次の食事を通り越したお茶の約束とは、流石寄生型の胃袋は並ではないと思ったものだ。
小さな返事の後の少しの間を置いて、ドアはきちんと開かれた。ちらりと青年を見上げた少年の目は、一瞬だけ落胆の陰りを乗せたけれど、すぐに朝と同じく笑顔を浮かべて、青年を室内に招き入れた。
「お菓子ありがとうございました。こちらも飲み物の用意、していたんです。………ブックマンは、もう少しかかりますか?」
方舟の調査について知識を求められた老人は、少し遅れるだろうと言っていたのは昼食の席でだった。少し思案げな眼差しで告げられた言葉は、自分の事を労っているのが解る。
………もしかしたら来れないのかも知れないと思ってはいたけれど、出来れば老人にはここに居て欲しかった。それはもしかしたら甘えかもしれないけれど、少年としても今の青年と二人でいるのは落ち着かない。
それでも青年を拒否しないのは、拒否する理由もまた、ないからだ。
彼は少年の知る『ラビ』ではないけれど、知っている初めの頃の姿には、似ている。それが柔らかく綻んでいったのは、師を探す為の旅の最中での出来事だ。
多分……もしもあの旅を同行していなければ、きっと今もまだ彼はあの優しい瞳を自分に向ける事は無かっただろう。
そう気付いてしまえば、何も知らない彼を拒む理由もなくなってしまう。これは、有り得ただろう未来のひとつでしかないのだから。
「飲み物って、紅茶?ハーブじゃねぇんさ?」
「ハーブはブックマン用です。以前、ラビが薬みたいで好きじゃないといっていたので、紅茶を用意しましたが……ディックはハーブの方がいいですか?」
好みは変化するものだ。もしかして余計なお世話だっただろうかと、渡されたお菓子をテーブルに出しながら少年が問い掛ける。
振り返らなかった少年は、青年の眉が少しだけ顰められた事には気付かない。
「別に、『ラビ』と同じでいいさ。俺はあいつになるんだし」
「でも、今はディックと『ラビ』は意識が違うんじゃないんですか?なら、真似しなくてもいいですよ」
自由に自分が選びたいものを選べばいいと、少年は苦笑を混ぜた声で告げた。
多分、青年の声が少しだけ固い事に気付いたのだろう。もしかしたら拗ねたとでも思ったのかもしれない。少年の声は、そんな風に窘めるような柔らかさを秘めていたから。
それを耳にしながら、少年の隣まで青年は歩み寄る。広くもない部屋だし、そこに借りてきたのだろう、大きなテーブルを置いているのだから、それは数歩で十分事足りた。
気配に気付いて少年が青年に目を向けた。もうバケットの中身は綺麗に並べられている。三段重ねのケーキスタンドは、きっと料理長が綺麗に磨いて貸してくれたのだろう。キラキラと銀の細工を施されたスタンドが輝いている。
「アレンはさ、『ラビ』になって欲しくないんさ?」
椅子に座りながらにっこりと、青年は少し意地の悪い笑みを浮かべて問い掛けた。
あくまでも『ディック』と『ラビ』を分けようと、少年はする。そしてそれを裏付けるように、彼は騙されないのだ。いつ自分が現れるか、『ラビ』に戻るか解らないというのに、会って目を合わせるとすぐに、彼は気付く。
…………気付いて、落胆をその目に乗せるのだ。
自分が彼の知る『ラビ』になる存在なのに、落胆される理由も解らない。こうして普通に一緒に居れば、きっと彼の中の『ラビ』と重なる部分は多い筈だ。それなのにそれすら分け隔てるのは、頑過ぎるのではないか。
まるで………存在するなと、そう言われているようで面白くない。
「?いいえ?ラビが戻ってくる事は嬉しいですけど………?」
でもそれは青年に言うのは失礼だろうと、言わずにいるだけだ。
青年もまた、『ラビ』の一部である事に変わりはなく、彼を否定するのはおかしい。それでも……どうしたって身勝手な心は、慣れ親しんだあの瞳を探してしまうけれど。
「違う」
だから答えた言葉に、けれど返されたのは短い否定の言葉。………少し、声が固かった。
「俺が、『ラビ』になっていくの、嫌?」
「嫌じゃないですよ、勿論」
探る眼差しが、ひと欠片の嘘も見逃すまいと煌めいて観察している。その事を知りながら、少年は唇を笑みに染め、瞳だけ悲しげに囁いた。
「ただ、きっと………これから同じ長さの時間が流れて、ディックが『ラビ』になっても……きっと、同じラビにはならないんです。それは、寂しいですね」
「なんで?同じになるさ。ちゃんと情報組み込んで、繰り返せば完璧に。アレンだって騙せるさ?」
寂しそうな眼差しが悲しそうに揺らいで、どうしてそれが自分に向けられなければならないのか、青年には解らない。
同じ時間が流れれば同じものが出来上がる。経験がそれを作り上げるだろう。まったく同じ経験は不可能でも、エクソシストとして戦場に赴けば、きっと『ラビ』と同じものが見える筈だ。
それを蓄積していけば、なれる。粗があればそこは上手く隠して変えていけばいい。そうすれば、きっと朝見たような笑顔も、ラビだけでなく自分にも向けられ、師に与えられていた嬉しそうな顔も自分が与える事が出来る筈だ。
きっとその方がいいに決っている。こんな風にコロコロと変わるより、………変わるような状態に甘んじている現在のこの肉体の所有者より、過去であったとしても自分の方が有効活用出来る筈だ。
それらは当然の計算から導かれる答えで、簡単な話だというのに、少年はそう伝えた言葉に、泣き出しそうに笑った。
伝えた言葉は間違っていない筈なのに、どうしても噛み合ない。
「ほら……ディック、やっぱり同じは無理ですよ」
「どうしてさ?」
泣き方を知らないように笑んでいる少年は、どうする事も出来ない我が侭を叫んでいる赤子を見つめるように困った顔で首を傾げ、少しだけ言い淀むように唇を噛んだ後、告げる事を選んだ痛みでその瞳を僅かに翳らせながら、囁いた。
「ラビは、僕を騙すなんて………言った事ないんですよ?」
たとえそれを思っていた事があったとしても。………偽りを与える事があったとしても。それでも精一杯、それを本当であると、心からの祈りであると教えるように、言葉を綴った人だ。
悲しみの所在が解らなくて、青年は顔を歪める。おかしな事は言っていない。自分であればそうするであろう手法を口にしただけだ。
それなのに、自分をすぐに見分けてしまうこの少年は、そんな真似を『ラビ』はしないと囁くのだ。
…………自分の筈の『ラビ』が、ひどく遠い蜃気楼のようだ。
彼が自分に騙される人なら、師である老人が歯牙にもかけない人物なら、良かったのに。
そうしたなら、そんな言葉に価値などなく、意味もなく、自分は皮肉に笑んで踏みにじれるのに。
寂しい微笑みは、きっと消えない。自分がそれを与えたけれど、消し方は知らないのだ。消えるのかどうかさえ、知らないのだ。
それをこれ以上記録したくなくて、不機嫌そうに装い、青年は顔を逸らすと目蓋を落とした。
目蓋の裏には、悲しげな少年の顔。………こんな場所にまで浮かんでは目を瞑った意味もない。
そうして、気付く。
…………自分は、この少年のこんな顔ばかり、見ているのだ。傷付き悲しみ逃げようとする、そんな瞳。
『ラビ』には、あんな笑顔だって、与える癖に。
刻まれた眉間の皺は、多分、少年の目にも映っただろう。それを確かめる事は出来なかったけれど……………。