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 弟子を前に、老人は嘆息を隠す事もなく盛大に吐き出した。
 その意味は解っていたので、青年も顔を顰めるだけで特に文句は言わない。当然と言えば当然だ。今回、おそらくは一番迷惑をかけたのは、他ならぬこの老人なのだ。
 肩を竦めるようにして組んだ足の上、乗せていた手のひらをぎゅっと握り締める。子供じみた仕草だけれど、叱られると解っているとどうしてもそんな癖が出てしまった。
 ちらりと落とされた老人の視線が青年を見つめている。それが解って、覚悟を決めたように青年は顔を上げると、師の顔を見遣った。
 ………少年の話では、この老人は何一つ反対も妨げる真似も、しなかったという。
 けれどそれはあくまで少年に対してだ。青年はこの老人の弟子であり、彼の跡を継ぐ後継者であり、次代のブックマンとして為さねばならない事は数多くある身だ。
 にもかかわらず、その根底を覆しかねない真似を、自分はした。過去の自身と現在の自身を交互に繰り返すブックマンなど、存在する筈もない。
 己の精神の脆弱さは、ロードとの戦いで痛感してはいたけれど、今回のこれはそれ以上に堪えた。何より、自身で全てが終わらず、傷の多くを少年に与え、自分を育ててくれる老人に重荷を背負わせただろう事実が、何よりもキツい。
 いっそいつものように手荒い仕置きでも与えてくれればいいのに、この老人はそういう時は決してその腕を振り上げないのだ。何が一番青年にとって堪えるか、熟知しているからこその、それはその時それぞれの処罰の方法だ。
 …………今回のこれは、無言の行だろうか。
 睨むように見遣った師は、片目だけを眇めて意外そうな色をその顔にのぼらせる。微かなその変化は、彼と長年一緒にいる青年だからこそ解った程度の、小さ過ぎる変化。
 それに唇を引き結び、一度青年は息を飲み込む。………不様に喉が鳴ったのは、この際気付かなかった事にした。
 「………事実だから、覆す気も諦める気もないさ」
 騒動の全てを、結局はきっと初めから原因も結果も知っていただろう老人に、それでもけじめだからと少年が報告に行くのを止めて、その役目を買って出たのは自分だ。
 包み隠さず、いつものログの報告と同じ無感情なままに、それを報告した。ただひとつ、少年を傍らに置く事を決めた、その事だけは告げる音が揺れてしまったけれど。
 全てを老人はいつもと変わらぬ姿のまま、表情も雰囲気も変化させる事なく、ただ傾聴していた。
 必要な質問以外の音も零さない。眼差しに冷たさを上らせる事もない。ただそこに居るという姿以外、青年には何も掴めなかった。
 老人の中、青年の話した一部始終がどうした重さを持ってカテゴリー分けされているのか、解らない。解らないけれど、決してブックマンという職を継ぐ者として、好ましい結果を選択したとは言えない自覚のある青年は、何を言われようと引かない気概を示すように、己の師を睨んだままだ。
 その眼差しを相変わらず意外そうなその表情で老人はしげしげと眺め、もう一度、今度は軽い溜め息を唇に上らせると、くるりと青年に背を向けて先程まで読んでいた本を取り上げた。
 「なんの話をしている」
 呆れたような声でそう呟くと、ぱらりとたった一度開いただけで正確に読みかけていたページを手繰った老人は、ちょこんと家具に腰掛けて、本を読み始めてしまった。
 そのままなんの反応もない。本気で今の一言で話は終えられてしまったらしい。
 ………それは有り得ないと、青年は慌てたように腰を上げ、老人との距離を詰めようと床を蹴ろうとする。
 その瞬間を見計らったように、本から視線も上げずに、老人はその皺の寄った唇を開いた。
 「必要な事を学べ。お前はまだ赤子と同じだ」
 低くしわがれた音は、けれど温度のある人の声だ。記録を語る機械の音色ではないその声の綴る意味を掴み損ね、青年は顔を顰める。
 学ぶべきはいつだって学んでいる。老人は手加減などしてはくれないのだ。この身に刻まれた記録だけではなく、生き残る為にあらゆる術も叩き込まれた。何一つ、自分はそれらを獲得し得ずに育った覚えはない。
 全て刻んだ。そうして今、こうしてそこから一歩遠ざかる選択をしてしまっている。
 それなのに、師はまるで禅問答のような不可解な答えを告げて、それで終わりにしようとするのだ。
 いつだって彼はその言葉の中の真意を語らない。己で気付けと放置するのだ。
 そうして、必要以上の情報は提示しない。ならば、考えなくてはいけない。この老人が何を自分に告げているのか。
 それこそが、老人が自分に乗り越え刻む事を求める、何かだ。そうであるが故に、愚かとも言える選択肢を選んだ自分は容認されている。
 もう自分を視野にも入れていない老人に小さく溜め息を吐き、青年は老人と同じく、今日中に記録しなくてはいけない本を取り上げると、僅かに顰めた顔のまま、その記録を行なった。
 ………その間、老人の指がページを手繰る事が無かった事すら、気付かないまま。


 青年が書庫に向かう事を伝えると、少年は笑んで頷き、あとで差し入れを持っていく約束をした。
 たった今昼食を食べ終えた所だというのにそんな事を言う少年に苦笑しながらも、少年から示された約束につい唇は緩んだ。
 溶けるような眼差しとその笑みに、隣に座る少年は困ったように視線を逸らし俯いてしまう。
 ………思いが通じ合った…と言うべき間柄なのだから、そうした眼差しを向けられる事は当たり前だと解ってはいるのだ。
 それでも、こうした他者が居る場所で示される甘やかな気配は、どう対処していいか解らなくて、つい俯く事を繰り返してしまう。
 こんな真似をしていたらまた青年は何か気に病んで、妙な事態を引き起こすのではないか、なんて。僅かながらもそんな心配はある。
 ちらりと窺うように前髪の隙間から青年を見上げてみれば、タイミングが良いのか悪いのか、顔を覗き込もうとしていた青年と目が合ってしまった。
 途端に頬が熱くなった自覚のある少年は、慌てて両手で青年を押し退け、席から立たせると、その背中を押した。
 「ほ、ほら!本沢山あるんでしょう?急がないと、夜までかかっちゃいますよ?!」
 「そこまでかからないさ。……なあ、アレン、顔見せて?」
 「嫌ですっ」
 ここは食堂だ。しかも昼時で、それなりに混んでいる。大量の食事を食べるせいで、少年の周囲はいつも空いて見えるけれど、その分好奇の目は多い。つまり、注目されているのだ、この状態ですら。
 友人同士のじゃれ合いと、いつも微笑ましそうに見ているその視線が、今はひどく恥ずかしい。
 今までだってこの程度のスキンシップはあった。だからおかしい事ではないというのに、その眼差しが今まで以上の情を孕んで向けられるから、少年はそれをどう受け止めればいいのか解らなくて必要以上に過敏になってしまう。
 …………多分、それは青年も解っているのだ。
 解っていてやっているのであれば、きっとそれは少年の心理も理解しての事だろう。だから本当は、戸惑いを露にした所で、この青年が以前のように思い詰める事もないと、解っている。
 ただ、悔しいのだ。突然余裕が出来たような顔でからかう青年だって、少し前までは自分と同じように戸惑ったり慌てたりと忙しかったというのに。
 少年に押しやられながら、青年は首を回して、俯き加減の真っ白な前髪を見下ろす。思った通り、白と赤のコントラストが鮮やかな少年の様子に、つい笑みが洩れてしまう。
 「アレン冷たいさ~。ちょっとからかっただけなのに、嫌だって」
 わざとしょんぼりした顔と声で、けれど目だけは笑っていて。それが本気でない事くらい、すぐに解る。
 バレる事も解った上での仕草なのだから、応える言葉にも遠慮はいらないと、少年はムッと顔を顰めて、もう一度その背中を叩くようにして押した。
 「なら、からかわないで下さい!」
 怒ったような声で言う癖に、その顔は拗ねている。青年が変わったというのと同じように、少年とて少しだけ、変わったのだ。
 …………甘える仕草が、自然になった。躊躇うよりも先に、それが示される。その心地よさを、きっとこの少年は知らない。
 そのせいでつい、からかってしまうけれど、本当はそれだけでもないという事は、きっとこの少年は気付かない。思い、青年は唇に苦笑をのぼらせる。
 「つれないさ~。んっじゃあ、アレン、俺コーヒーも持って来て欲しいさぁ?」
 クスクスと笑んで、青年はこれで書庫に向かう事を教えるように声をかけた。刻んでしまった苦笑は少年の言葉に対する返答のように見せかけて、青年は唇を尖らせる少年の髪を掻き混ぜると、また後で、と歩き始めた。
 それを望んだのは少年だけれど、少しだけその背を見る眼差しが寂しそうだ。
 ………それも背中で感じ取って、青年は零れそうな笑みを精一杯の理性で耐えた。
 こんな風に愛おしい仕草をされるのだから、もっと近づきたい、なんて。願わない方がおかしいのだ。
 それでもまだ、頬へのキスでも初心な反応を返す少年だ。からかう仕草の中でのスキンシップくらい貰わなければ、彼を追い詰めかねない。
 それこそ彼が答えてくれたあの日に、言っていた最悪の事態のように、彼を傷つけかねない事くらい、自分でも解っている。
 せめて解っている事くらいは履行せず、優しく慈しみ守りたい、と。
 …………魂のみとなっても慈しみを捧げようと祈る少年の意志に添うように、祈った。


 こんこんと軽やかにドアを叩けば、名も名乗らずともそのドアは開かれて入室を促された。
 きっとこの老人は、ドアの外の気配だけで誰だかが解ってしまうのだろう。とても自分には至れない境地だと思いながら、軽く会釈を返して室内に足を踏み入れた。
 相変わらず、本や書類や新聞が散乱した部屋だ。確か昨夜読み終えたものを大分整理した筈なのに、また元に戻っている。
 一体どこからこれらの書物が舞い込んでくるのか、その姿だけは一度も見た事のない少年には不思議な怪奇現象だ。
 室内を見渡しながら、奥に進んだ老人が振り返り、その手に持つマグカップを差し出されるまでの少しの間、少年は話をどう切り出すか、その事に頭を悩める。
 もう既にこの室内にいる事は慣れてしまっていて、そんな事を悩みながらでも定位置となっている青年のベッドの端に危うげなく進んで腰掛けて、睨むように壁に立てかけられるように積み重なった本の山を見ていた。
 その眼前に、いつの間にかマグカップと老人の皺の刻まれた指が入り込む。………相変わらず、気配が皆無な人だと苦笑した。
 「ありがとうございます」
 「構わん。………何用で来たか、聞いた方が良いようだが?」
 「………………えっと、多分、ブックマンが想定している通り、かと思います」
 いつもの事ながらこちらが切り出す事に悩んでいると、老人はすぐにそれを察して促してくれる。
 それはきっと物凄い子供扱いとも言える甘やかしに近い仕草で、以前青年にそんな事を言ったなら、やはり師は少年に甘いのだと、憮然とした顔で抱き締められた。
 老人の気遣いへの嬉しさと、思い出してしまったぬくもりに顔を赤らめ、少年は手にしたマグカップを両手で握り締めながら俯いてしまう。
 それを視線だけで見遣り、老人は少年と同じくベッドの端に腰掛けて、煎れたばかりの茶を啜るようにして口に含んだ。
 「あの、ブックマン。多分、いらない事だろうとは思うんですが、いいですか?」
 そっと躊躇うようにして綴られた言葉は、遠慮というよりは謙虚かも知れない。その音色を吟味しながら判断した老人は、存外今回の騒動でプラスに働いたのは、馬鹿な弟子だけではなくこの少年にもで、なかなか大きな収穫を差し出せたのかもしれないと眺めた。
 老人に向けられる視線は、もしも以前であれば泣き出しそうな申し訳なさそうな眼差しだっただろう。けれど今は、その眼差しが揺らがない。
 おそらく、彼の中で見据える事の出来たものが、出来上がったのだろう。
 それはきっと、揺らがずに居続けられる程、この現実は甘くはないけれど。………それでもその度にこの少年は、それを噛み締め前を見据えるしなやかさを眼差しに宿している。
 「言うだけならばおぬしの自由だ」
 そっと呟きながら、孵化した蝶の鮮やかな羽の美しさに、内心感嘆とする。この先、この命がどれ程鮮烈に歴史に刻まれるか、予想する事すら難しい程だ。
 「きっとそう言うと思いました。だから、これは僕の勝手な独り言です」
 にっこりと嬉しげに瞳を細め、子供のような無邪気な笑みで少年が言う。その声すら笑んでいるのは、自惚れではなくこの少年が老人を愛おしんでいるからだろう。
 ………そんな事を言えば、無意味な悋気を擡げる弟子を脳内に浮かべ、この少年の鮮やかさに比べて、どうにも見劣りすると溜め息を吐きたくなる。
 「僕は、とても身勝手な理由で、あなたの後継者を選んでしまいました」
 それは謝罪出来ない事だから、謝る事はない。けれど、選んだが故に、この先きっと老人にかかる負担が増すだろう。その事だけは、謝したいと思った。
 真っ直ぐに前を見つめ、壁を食い入るように映す眼差しには、悔いるものも憐れむものもない。ただ、事実を事実として受け止め、それを乗り越える為の道を模索する瞳。
 いい成長をしていくと、導き手もいない筈の少年の歩む足の美しさに、知らず浮かびかけた笑みを老人は静かに殺した。
 「ラビと、生きていきます。きっと、この先も。………でも、きっといつか、あなたの為に走ります」
 そっと睫毛が揺れ、眼差しが途切れたかと思うと、少年は傍らに座る老人を見下ろして、首を傾げるようにしてその言葉を捧げた。
 予想通りとも意外とも言えるその言葉に、老人は答えず、少年の顔も向けはしなかった。
 そんな反応は想定内だったのか、少年は困ったような笑みで唇を染めると、瞳を柔らかく細めて微笑みに変えた。
 「あなた達が生き延びてくれれば、僕も生き残れる。これはそんな我が侭ですから、あなた達は痛む事はありません」
 「………………馬鹿弟子が騒ぐな」
 「既に騒がれて泣き落とされたようなものですよ。………でも、僕は犠牲になんかなりませんよ。だって、そんな事したら、きっとあなた達を縛ってしまうでしょう?」
 朽ち果て支える事も出来なくなりながら、それでもその身も心も捉えるなんて、悲し過ぎる。
 「僕は糧になるならいいです。けど、傷になる事も足枷になる事も嫌です。だから、安心して背中を向けて下さい」
 必ず生き残って笑顔を差し出してみせるから。背を預け戦うように。この身を信じ、先を進むように。未来を選んで、歩んで欲しいと、いとけない声音が囁いた。
 ………それは、過日に聞いた泣き濡れる音色とは違う、慈しみの音。
 本当にこの少年は成長が早い。つい先日弟子に学べと言った事を、既にこの少年は身に纏い、与える側に立っている。
 思い、老人は胸中で嘆息する。
 独りになる事は、あるのだ。この長い人生の中、………否、短かろうと、必ず。
 その中で共に歩むぬくもりを得たなら、覚悟を持たなくてはいけない。守る事だけでは生き延びられないのだ。
 共に戦い、活路を見出し、共同戦線を張れる、そんな意志を。未だ守る事だけで全てを賄えると思い込んでいる未熟な弟子に、この意志を見せてやりたい程だ。
 「おぬしの方が、ブックマンには向いておるかもしれんな」
 嘆息とともにぼやいてみれば、少年は朗らかな笑みを顔にのぼらせ、破顔したままの弾んだ声音で答える。
 「ははっ、いいですね、それ。ブックマンとずっと一緒にいられるのは、ちょっと羨ましい。けど、僕は無理ですよ、能力云々じゃなく。……解っているでしょう?」
 傍観者でいられる程、自分の意志は強固に出来ていない、必ず足を踏み込み救い出そうと、この身は動いてしまう。
 自分は、彼らの存在とはまた異質のものに、既に支配された身だ。
 「でもなれないから、あなた達の為に出来る事も、きっとあります。だから、必要があれば、僕を使って下さい」
 老人が見つめる先の、マグカップを支える腕は、今日は一度として震えていない。この少年の中、どれ程の物思いが渦巻き淘汰され、月明かり程のささやかさで昇華されていくのか。
 身を刻むような自己犠牲に溺れるかと思えば、怯え惑いたたらを踏んで。そうかと思えばそれすら飲み込み、内包した全てを鮮やかに花開かせる、無垢な花。
 「………おぬしとて、まだ未熟者に変わりはあるまい」
 それはとても危うい、美しさだ。摘み取られ踏みにじられる危険を孕んだ、健気な花弁の意志。
 小さな老人の声は少年の祈りを叶えぬ事を願うように響き、少年は一瞬見開かせた瞳を、すぐに至福を知る柔らかさに溶かせて笑んだ。
 「未熟者でも、大好きな人達の為には頑張るものですよ?」
 だから何一つ憂えずにただ願ってくれればいいのだ、と。輝く銀灰の瞳は囁いた。
 こんな老人相手に捧げる情ではあるまいと、溜め息を小さく吐き出して、老人は漸く少年を見上げた。
 「酔狂もここに極まれり、じゃな」
 「事実を言ったまでです。…………さて、じゃあブックマン、僕、そろそろもう一人の未熟者が痺れを切らせると思うんで、行ってきますね」
 手の中のマグカップを急いで飲み干して、少年は悪戯っ子のように笑んだ。その代名詞が誰を指すかは問わなくても解り切っていて、老人は今度は盛大な溜め息を唇から落とし、天井を見上げる仕草で呆れた顔を強調した。
 「小僧、あまり甘やかす事はないぞ」
 「お互い様ですよ、ブックマン」
 御馳走様とマグカップを返しながら、老人の茶目っ気を譲り受けるようにウインクを返して少年は笑う。
 ひらりと身を翻し、床の本を上手に避けて歩く仕草は、この室内に慣れてしまったが故の所作だ。
 それを眺め、確かに少年の事を言えた義理はない、と老人は苦笑した。


 それでも、きっと。

 尋ねる真っ白な影が笑いかければ、このドアは開かれる。
 用などなくとも、理由などなくとも。
 ただそこにいる事が馴染み始めている。


 危険な傾向だというのに、それにはシグナルを感じない。


 自分も十分まだ未熟だと、老人は吐息を落とし、ドアをくぐる少年を見送った。







   番外編

 ラビとブックマン。
 ラビとアレン。
 アレンとブックマン。
 それぞれのその後、です。

 ラビはやっとアレンの事でもブックマンから目を逸らさないでいられるようになって。
 アレンはラビに甘えるのが自然になって、未来を少しだけ思えるようになって。
 ブックマンはどうしようもない二人を窘めつつ見つめる事に愛おしさを自覚して。
 それぞれが少しずつだけど、変化した。
 誰がこうしたから、じゃなくて。誰かと関わる事でゆっくりと。それでもプラスに、優しく。
 そうやって愛しいものを少しずつ増やしていってくれるといいです。それがきっと、遠い未来で糧と変わり支えてくれるから。

 連載にお付き合いくださりありがとうございました。一先ずこれでこの物語は終わりです。
 あともう一作、番外編を書いて完結。
 まとめ切れず読みづらい部分も多々あったかと思いますが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

10.10.16